SH4672 文化庁、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)――「生成AIに関する各国の対応について」および有識者ヒアリング 井上乾介/福井佑理/吉田崇裕(2023/11/01)

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文化庁、文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第3回)
――
「生成AIに関する各国の対応について」および有識者ヒアリング――

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介

弁護士 福 井 佑 理

弁護士 吉 田 崇 裕

 

 はじめに

 令和5年10月16日、文化庁の第23期著作権分科会法制度小委員会(以下「本委員会」という。)の第3回が開催された[1]

 同分科会における主な検討課題の1つとして、生成AIと著作権に関する論点整理が挙げられているところ[2]、本委員会の第1回では、「AIと著作権に関する論点整理について」[3]などの資料に基づく生成AIに関する論点整理が、第2回では有識者に対するヒアリングが行われた。

 本委員会の第3回では、引き続きAIと著作権についての議論および有識者ヒアリングが議題とされる。同回の議事内容は執筆時において未公開であるところ、本稿では同回において配布された資料(資料1から資料5)についてその要点を紹介する。

 

2 生成AIに関する各国の対応について(資料4[4]

 本委員会において配布された「生成AIに関する各国の対応」(資料4)では、日本、欧州連合(EU)、米国、ドイツおよびイギリスにおいて生成AIに適用される現行法令および現在審議・検討中の法制の概要をまとめている。

 日本の著作権法では、これまで本委員会で議論されたとおり、生成AIの学習行為については、30条の4および47条の5により、著作権の権利制限がされ得る。また、AI戦略会議第5回において、新AI事業者ガイドラインスケルトン(案)が作成されており[5]、AIに関する新たなガイドラインの策定が進められていることが紹介されている。

 次に、EUにおいては、テキストデータマイニング(Text Data Mining)に著作物を用いる場合には、DSM指令[6]3条および4条により権利制限がされ得ること、現在審議が進められているAI Act[7]において、生成AIについての規制創設が検討されていることが指摘されている。

 また、米国においては、連邦著作権法[8]107条のフェアユース規定により、生成AIの学習行為や利用行為に対して権利制限がされ得ること、政府が主要AI開発企業等7社から自発的誓約(Voluntary Commitments)[9]を取得し、企業がAIを開発するに当たってsafety/security/trustの3つの原理を順守することに合意を得たこと等を紹介している。

 

出典:前掲注[4]に同じ 1頁

 

 また、ドイツの著作権法[10]では、テキストデータマイニングに著作物を用いる場合には、44b条および60d条により権利制限がされ得ること、イギリスの著作権法[11]では、テキストおよびデータのコンピュータ解析に著作物を用いる場合には、29A条により権利制限がされ得ることが指摘されている。加えて、イギリスにおいては、「生成AIと著作権に関する実践規範」(Code of Practice on Copyright and AI)[12]の策定に向けて検討が進められていることがそれぞれ紹介されている。

 

出典:同上 2頁

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(ふくい・ゆり)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2007年一橋大学法学部卒業。国内出版社勤務。2013年東京大学法科大学院卒業。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2020年King’s College London(LLM)修了。

 

(よしだ・たかひろ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2018年東京大学工学部卒業。2020年東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻修士課程修了。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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