SH4682 欧州委、対内直接投資審査年次報告書(2022年度版)および輸出管理に関する最新統計を公表 藤田将貴/山下舞(2023/11/10)

組織法務経済安保・通商政策

欧州委、対内直接投資審査年次報告書(2022年度版)および輸出管理に関する最新統計を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 藤 田 将 貴

弁護士 山 下   舞

 

1 はじめに

 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、2023年10月19日、2020年10月から全面適用を開始した対内直接投資審査規則[1](以下「FDI規則」という。)の運用状況に関する2022年度の年次報告書(以下「本審査報告書」という。)、および、2021年の加盟国における輸出管理に関する統計(以下「本輸出管理統計」)をそれぞれ公表した。以下では、本審査報告書および本輸出管理統計の概要について説明する。

 

2 本審査報告書について

 以下では、まずFDI規則の概要等について説明し(下記)、次に、本審査報告書の概要を解説する(下記)。

⑴ FDI規則の概要等

 FDI規則は、欧州連合(以下「EU」という。)加盟国による安全保障等の観点から行われる外国投資家の投資に対する審査(対内直接投資審査)に関する加盟国間の協力のための枠組みを定める規則であり、欧州委は、規則の実施に関する年次報告書を欧州議会および理事会に提出することとされている(5条)。年次報告書は、2021年から発行されており、今回で3度目の発行となる。

 FDI規則は、安全保障や公の秩序の観点に基づく外国(域外)からの投資の審査に関して、各加盟国の投資審査制度を前提に、欧州委・加盟国間の協力体制を導入するものである。同規則は、EUレベルでの投資審査制度を設置するものではなく、審査権限はあくまでも各加盟国にある(3条1項参照)。

 もっとも、加盟国は、対内投資審査を行う場合、その詳細を速やかに欧州委とほかの加盟国に通知しなければならない(6条1項)。

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(ふじた・まさき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年早稲田大学法学部卒業。2006年京都大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年University of California, Berkeley(LLM)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。大手総合商社法務部への出向経験を有する。経済安全保障・通商(米国・英国・EUの経済制裁及び貿易管理を含む)、M&A、事業再生分野を中心に取り扱う。主な著書・論文:『英文M&Aドラフティングの基礎』(共著)(金融財政事情研究会、2023)、「グローバル法務 日本企業が対応すべき世界の経済安全保障と人権の課題」(共著)会社法務A2Z 2023年1月号、「米国の経済制裁の基礎知識と実務対応のポイント」(Business Lawyers(ウェブサイト)、2022)、「米財務省 CFIUS2022年次報告書を公表」(商事法務ポータル、2023)ほか多数。

 

(やました まい)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2021年慶應義塾大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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