SH4793 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について(素案)」のパブコメを開始 中崎尚(2024/02/01)

取引法務特許・商標・意匠・著作権

文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について(素案)」のパブコメを開始

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 中 崎   尚

 

1 はじめに

 AIと著作権をめぐっては、わが国では、平成30年(2018年)の著作権法改正において、「柔軟な権利制限規定」[1]として著作権法(以下「法」と記載する場合がある)第30条の4および第47条の5が導入され、「機械学習天国」とも呼ばれる、世界でも類を見ないAI学習向けの環境が整えられた。2022年後半からの、画像生成AIブームにおいて、特定のアーティストの画風・作風をAIに学習させ、再現する事案が多発するようになった。海外では、生成AIに対し、自身の著作物を無断で利用されたとして訴訟に踏み切る動きが多発している。

 

生成AIの学習利用をめぐる主要な訴訟

原告

被告

訴訟の概要

イラストレーター3名(Sarah Anderson、Kelly McKernan、Karla Ortiz) ・Stability AI(Stable Diffusion)
・Deviant Art(Dream Up)
・Midjourney(Midjourney)
画像をAI学習に無断利用されたとして著作権侵害・DMCA違反等を主張したが、2023年10月に訴えの大半が却下された。
Getty Images社 ・Stability AI(Stable Diffusion) 出力結果に無償利用時の透かし表示が含まれることを指摘し提訴した。
『The Bedwetter』の著者3名 ・OpenAI(ChatGPT) ・Meta(LLaMA) 著書をAI学習に無断利用されたとして著作権侵害・DMCA違反等を主張したが、2023年11月に訴えの大半が却下された。
Matthew Butterick(プログラマー兼弁護士)ほか ・米Microsoft
・OpenAI
・GitHub (GitHub Copilot)
Githubに投稿したソースコードがAI学習に無断利用されたとして、著作権侵害・DMCA違反等を主張した。  
The New York Times Company(NYT)は、 ・米Microsoft
・OpenAI (ChatGPT)
NYTの著作物がAI学習に無断利用されたとして著作権侵害・DMCA違反・商標の希釈化等を主張した。

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(なかざき・たかし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。

 

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング


*「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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