SH4799 東証、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を巡りポイント・事例を公表――投資者が「期待している取組みのポイント」「一定の評価をしている事例」を取りまとめる (2024/02/07)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

東証、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を巡りポイント・事例を公表
――投資者が「期待している取組みのポイント」「一定の評価をしている事例」を取りまとめる――

 

 東京証券取引所は2月1日、「投資者の視点を踏まえた『資本コストや株価を意識した経営』のポイントと事例」を取りまとめ、公表した。

 東証では2022年4月4日付で実施した市場区分の見直しを巡り「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」を設置(同年7月29日初会合開催)、市場関係者からの意見募集(同年9月30日から10月31日まで)などを通じて課題を把握しつつ、上場会社の企業価値向上に向けた取組みについて追加的対応を図ってきたところである。2023年1月30日には「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議の論点整理」を取りまとめるとともに「論点整理を踏まえた今後の東証の対応」(以下「東証対応」という)を公表。一大課題であった「経過措置の取扱い」も明確化された(いわゆる経過措置問題に係るフォローアップ会議の議論について、SH4307「東証、市場区分見直しを巡る「経過措置の取扱い」で終了時期を定める制度要綱を公表・意見募集開始――2025年3月以後到来基準日から本来基準適用+改善期間1年、なお不適合の場合は監理銘柄指定へ(2023/02/08)」既報。意見募集結果については東証において2023年3月31日公表、同日付による有価証券上場規程等改正が翌4月1日に施行された)。

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 市場区分見直し後のプライム市場において「PBR1倍割れの企業が半数近く存在する」状況についてはフォローアップ会議の議論においても当初から課題とされた。上記・東証対応では「中長期的な企業価値向上に向けた取組の動機付け」となる枠組みづくりの1つとして「資本コストや株価への意識改革・リテラシー向上」を掲げ、プライム市場・スタンダード市場の上場会社に対し「経営陣や取締役会において、自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、その状況や株価・時価総額の評価を議論のうえ、必要に応じて改善に向けた方針や具体的な取組、その進捗状況などを開示することを要請」すると表明。実施時期について「2023年春」と明記したうえで東証は3月31日、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表し、(i)現状分析、(ii)計画策定・開示、(iii)取組みの実行――からなる一連の対応・継続的実施を要請した(なお、2023年4月26日付「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」参照)。今年1月15日には「『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』に関する開示企業一覧表(2023年12月末時点)」の公表に至っており、本「一覧表」については各月末時点の状況に基づき翌月15日を目途として今後も継続更新・公表される。

 今般の「投資者の視点を踏まえた『資本コストや株価を意識した経営』のポイントと事例」(以下、併せて公表された【別紙】事例集と区別して単に「ポイントと事例」という)は、東証によると「2023年末時点で、プライム市場上場会社の49%、スタンダード市場上場会社の19%において開示が行われるなど、多くの上場会社において取組みが進められておりますが、国内外の株主・投資者からは、更なる取組みの進展を期待する声が多く寄せられるともに、上場会社の皆様からは、対応のポイントや事例の公表を求める声が多く寄せられて」いるとされる状況下、取りまとめられた。上場会社の参考とすべく、東証では「2023年4月以降、中長期の企業価値向上を重視する投資者(アクティブファンドなど)を中心として、計90社超(国内約3割、海外約7割)の投資者と面談」を実施。これに基づき「投資者が企業に期待している取組みのポイント」「ポイントが押さえられていると投資者が一定の評価をしている取組みの事例」「投資者目線とのギャップのある事例等」を掲げる。

 上場会社に求められる対応として(I)現状分析・評価、(II)取組みの検討・開示、(III)株主・投資者の対話――と構成。たとえば(II)によると「投資者が企業に期待する『取組みの検討・開示』」として、まず対応の大枠を紹介する(ポイントと事例14頁)。続いて順に、ポイント①「経営資源の適切な配分を意識した抜本的な取組みを行う」、ポイント②「資本コストを低減させるという意識を持つ」、ポイント③「中長期的な企業価値向上のインセンティブとなる役員報酬制度の設計を行う」、ポイント④「中長期的に目指す姿と紐づけて取組みを説明する」――といった対応ポイントごとの紹介ページを据えた(ポイントと事例15~18頁)。これらの各ページに「解説」「取組例」「投資者目線とのギャップ事例」をそれぞれ織り込むように編まれており、「取組例」として挙げられた各社の取組みに関しては【別紙】事例集の掲載箇所を併せて示すことにより詳細を参照できるようになっている。

 東証では今般の取りまとめ・公表について(ア)要請済みの「対応」を検討中の上場会社には検討の参考として、(イ)すでに開示済みの上場会社には今後のアップデートの参考として活用されることを目的としている。正式公表前の「ポイントと事例(案)」については1月17日開催のフォローアップ会議で会議メンバーの意見が聴取され、とくに「事例そのものの位置付け」「収載に当たっての個別の表現」に関して複数の指摘を受けた(第14回会合議事録8~9・11・12〜14頁参照)。公表資料では、たとえば【別紙】事例集の表紙において「国内外の多くの投資者との面談に基づき、投資者が企業に期待している取組みのポイントが押さえられていると投資者が一定の評価をしている取組みの事例を取りまとめた」と、いわば投資者目線である旨が明記されている。東証がオーソライズして収載・公表に至ったものではない点、留意しておきたい。

 


 東証、投資者の視点を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例の公表について
https://www.jpx.co.jp/news/1020/20240201-01.html

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