SH4805 公取委、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」報告書を公表 原悦子/橋本康(2024/02/09)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」
報告書を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 原   悦 子

弁護士 橋 本   康

 

1 はじめに

 わが国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備することを目的として、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス新法」という。)が令和5年4月28日に可決成立し、同年5月12日に公布された。

 公正取引委員会は、フリーランス新法の取引の適正化に関する規定において、政令・公正取引委員会規則で定めることとされている事項について検討を行うため、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」を開催し、検討を行ってきたところ、令和6年1月19日、報告書(以下「本報告書」という。)が取りまとめられ、公表された[1][2]

 以下では本報告書の概要を紹介する。

 

2 フリーランス新法3条1項による委任事項(業務委託をした場合の明示事項)

 フリーランス新法3条1項は、特定受託事業者(以下「フリーランス」という。)に業務委託をする事業者(以下「業務委託事業者」という。)に対して、業務委託をした場合に、法定事項および公正取引委員会規則で定められた事項を明示することを義務付けている(以下そのような事項を「明示事項」という。)。本報告書では、フリーランスが業務委託事業者として規制対象となる可能性にも配慮したうえで、この明示事項の内容について検討し、大要以下のとおりの結論を出している。

 まず、フリーランス新法と下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の遵守(禁止)規定の違いを反映した部分[3]を除いて、下請法3条1項の書面によって記載することとされている事項(以下「下請法記載事項」という。)を明示事項とするのが望ましいとされた。

 また、明示事項とすべきかが論点になっていた項目のうち、知的財産の帰属、納品・検収方法、諸経費、違約金等およびその他の項目については、「明示事項として義務付けることが必要とまでは考えられない。」とされ、デジタル払いについては、「業務委託事業者が支払方法としてデジタル払いを用いる場合に必要となる事項を明示事項とすることが考えられる。」とされた[4]

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(はら・えつこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1998年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2006年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)修了。2007年ニューヨーク州弁護士登録。2019年~2022年東京大学大学院法学政治学研究科准教授。独禁法の分野において、独禁調査案件、企業結合届出の対応に幅広い経験を有するほか、クロスボーダーでの事業展開、フランチャイズ、戦略的提携に関する案件、通商業務も多く取り扱う。

 

(はしもと・やすし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2007年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2010年早稲田大学法科大学院卒業。2023年弁護士登録(第一東京)。2017年UCLA School of Law(LLM)修了。2018年Georgetown University Law Center (International Business and Economic Law (IBEL) 修了。2018年ニューヨーク州弁護士登録。平成23年10月に公正取引委員会に入局し、企業結合案件やデジタルプラットフォーム審査案件など、公正取引委員会での業務に10年以上にわたって従事していた。令和5年2月より、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業に所属し、競争法を中心にアドバイスを行っている。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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