SH5301 広告表示・勧誘規制に関する試論(再考)――事業規制手法の多様化と(行政)法理論の観点から 第3回 広告表示・勧誘規制:総論(その2)――新たな視点と試論 酒井俊和(2025/01/31)

取引法務業法・規制法対応表示・広告規制

広告表示・勧誘規制に関する試論(再考)
―事業規制手法の多様化と(行政)法理論の観点から―
第3回 広告表示・勧誘規制:総論(その2)――新たな視点と試論

弁護士法人キャストグローバル

弁護士 酒 井 俊 和

 

【第3回】 広告表示・勧誘規制:総論(その2)――新たな視点と試論

【目次】

1 広告表示・勧誘規制――はじめに
 ⑴ 本稿の目的
 ⑵ 広告表示規制とは?
 ⑶ 勧誘規制とは? ――金融法の観点も踏まえて
 ⑷ 広告表示・勧誘規制という(広義の)視点――行政法の観点も踏まえて
 ⑸ 本稿の構成

[ここまで第1回]

2 広告表示・勧誘規制:総論(その1)――従来の議論
 ⑴ 広告表示規制に関する従来の文献
 ⑵ 広告表示規制全体の体系・類型

[ここまで第2回]

3 広告表示・勧誘規制:総論(その2)――新たな視点と試論

 ⑴ 従来の書籍・文献の特徴:私見
(a) 各種事業規制手法(行政行為)のうち、広告表示(に対する制限・条件型)規制に対象を絞っていること - 対象の限定①
(b) 広告表示規制のうち体系的にまとめられているもの(例:公正競争、消費者保護、知的財産権)は一部で、それ以外(金商法、薬機法など)は特定業種の広告表示という形で個別に記載されている(体系には含まれていない)こと– 対象の限定②
(c) 金融法(金商法)の観点からは、「広告」規制と密接に関連しながら区別される「勧誘」規制の議論が含まれていないこと – 対象の限定③
(d) 行政法の観点からは、(a)広告表示規制にも(i)制限・条件型と(ii)(一律)禁止型があり、(b)より広く、事業規制手法との関係では、(iii)業規制(ライセンス規制)その他の許認可(許可制)・届出規制(届出制)といった規制類型もあるが、従来の議論は、広告表示規制のうち制限・条件型(下令制・禁止制)に重点が置かれていること – 対象の限定④
(e) 他方、広告表示については、広告表示固有の問題点に限定されず、さまざまな視点からの議論(知的財産権、人格権、個人情報保護法、広告責任、製造物責任法など)を含めて議論されていること – 対象・視点の拡散

 ⑵ 本稿の立場
(a) 行政法規・刑事法規・民事法規という観点からは、行政法の観点に主眼を置いた検討を行う – 対象の限定①
(b) 検討対象とする個別法令(広告表示・勧誘規制)については、(i)すでに多くの文献で検討や分析が行われているもの、(ii)広告表示・勧誘と関連性はあるが広告表示・勧誘固有の問題ではないものは、本稿の検討対象外とする – 対象の限定②

 ⑶ 本稿の検討対象
(a) 大麻取締法・覚せい剤取締法・麻薬等取締法における広告表示・勧誘規制
(b) 宅建業法における広告表示・勧誘規制
(c) 金融法(金商法)における広告表示・勧誘規制
(d) 薬機法における広告表示・勧誘規制

 

3 広告表示・勧誘規制:総論(その2)――新たな視点と試論

 ⑴ 従来の書籍・文献の特徴:私見

 本稿第2回連載では、広告表示規制に関する従来の文献を比較検討するという形で概観した上で、広告表示規制全体の体系・類型を検討した。これに対する総評として、各論者による広告表示規制全体の体系や類型には、一定の共通点はあるものの、統一的な整理は存在しないように思われる点についても触れた(第2回2⑵参照)。

 ここではさらに、本稿第1回連載で説明した問題意識(第1回1⑴参照)に基づいて、広告表示規制に関する従来の文献の特徴や課題と思われる点を取り上げる。

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(さかい・としかず)

1999年弁護士登録。株式会社東京三菱銀行など複数の国内・外資系の金融機関に出向。金融規制及びコンプライアンス全般、ストラクチャード・ファイナンス、バンキング、信託、アセット・マネジメントなどを専門とする。横浜国立大学大学院国際経済法学研究科卒業。
著作物は『ファイナンス法――金融法の基礎と先端金融取引のエッセンス』(商事法務、2016)など。講演は「パネルディスカッション『世界と国内の規制の最新事情:日本と世界が抱える新たな課題』」(金融規制ジャパン・サミット2017)、「Harmonization of Capital Market」(第54回AIJAミュンヘン国際会議)など。

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