事業性融資の推進等に関する法律案
――新しい全資産担保「企業価値担保権」の創設――
アンダーソン・毛利・友常 法律事務所*
弁護士 粟田口 太 郎
1 はじめに
本年3月15日、金融庁により、「事業性融資の推進等に関する法律」に係る法律案(以下「法案」という。)が国会に提出された[1]。
法案は、全7章・269か条から構成される本格的な内容のものである。
法案で最も注目されるのは、全体の8割超を占める第3章「企業価値担保権」(6条~231条)である。
企業価値担保権は、金融庁において「事業成長担保権」との仮称で検討されていたものであり、株式会社・持分会社(たとえば合同会社)の「総財産」上の担保(いわゆる全資産担保)の設定について、設定者の商業登記簿上の登記による簡潔な手続をもって可能とし、担保目的財産のモニタリングを通じて、事業性を見極めた融資とその管理を促進する作用をもつものである。
わが国の事業会社の健全な成長・発展のために、いわゆる「生かす担保」としての積極的な活用が期待される。
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(あわたぐち・たろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士。2019年から2021年まで、公益社団法人商事法務研究会「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」委員。会社法務、金融法務、事業再生・倒産法務に横断的に従事。ABL協会理事・運営委員長。武蔵野大学大学院法学研究科(ビジネス法務専攻)特任教授。早稲田大学大学院法務研究科非常勤講師。
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