米国・AIの安全、安心、信頼できる開発と利用に関する
大統領令に基づく各政府機関によるアクションの概要
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 中 崎 尚
1 はじめに
2024年4月29日、米国ホワイトハウスは、”Biden-Harris Administration Announces Key AI Actions 180 Days Following President Biden’s Landmark Executive Order”と題する記事を公開した[1]。
これは、6カ月前に発令された、「AIの安全、安心、信頼できる開発と利用に関する大統領令」(Executive Order on the Safe, Secure, and Trustworthy Development and Use of Artificial Intelligence、以下「EO」という。)[2]について、各政府機関が報告したアクションをまとめたものである。本記事では、各政府機関によるアクションの概要を紹介する。
2 安全性とセキュリティ管理に関するアクション
DHS(Department of Homeland Security、国土安全保障省)、DOE(Department of Energy、米国エネルギー省)、OSTP(Office of Science and Technology Policy、大統領府科学技術政策局)が行った、危険な生体材料の工学的応用におけるAIの悪用に関する研究など、5つの事例を示している。
- ① 核酸合成スクリーニングの枠組みを確立し、危険な生物学的物質の工学へのAIの悪用を防止する。この作業は、国土安全保障省(DHS)、エネルギー省(DOE)、科学技術政策局による、AIが悪用される可能性に関する詳細な研究、および化学的・生物学的脅威を悪化させるAIの悪用に対する緩和策を勧告したDHSの報告書を補完するものである。これと並行して、商務省は民間セクターを巻き込み、実施を促進するための技術ガイダンスの策定に取り組んできた。この枠組みが発表された180日後から、各省庁は助成金交付機関に対して、スクリーニングを行う業者から合成核酸を入手することを義務付ける。
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アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。<連絡先>
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