東証、「親子上場等に関する投資者の目線」を公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 塚 本 英 巨
弁護士 山 田 智 希
1 はじめに
親子関係にある会社がいずれも上場会社である、いわゆる「親子上場」については、親会社株主および子会社株主双方の視点から、その在り方をめぐり様々な議論がなされているところである。そうした中、東京証券取引所(以下「東証」という。)は、2025年2月4日、投資者が一般に親子上場に対して有している目線をまとめた資料として「親子上場等に関する投資者の目線」(以下「本資料」という。)を公表した[1]。
本資料は、東証に設置された「従属上場会社における少数株主の保護の在り方等に関する研究会」(以下「本研究会」という。)における有識者の議論や100社超の投資者との面談結果を踏まえ作成されたものとされている。親子上場に関しては、東証が2023年に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現」の要請も踏まえ、親子上場を維持することが中長期的な企業価値向上の実現に向けた経営資源の適切な配分の観点から真に適切な在り方であるのか、親会社および子会社双方における適切な検討や開示が求められるとされている。しかし、この点に関して企業側の目線と投資者の目線との間に依然としてギャップがあると指摘されているところ、本資料は、企業側がそうしたギャップを埋めるべく、どのようなアプローチを取るべきかを検討する上で、有用な資料であると考えられる。
そこで、本稿では、本資料の内容および今後予定されているフォローアップの見通しについて、簡単に整理することとしたい。
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(つかもと ひでお)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士
2003年東京大学法学部卒業、2004年弁護士登録。2010年~2013年に法務省民事局へ出向し、平成26年会社法改正の企画・立案を担当。また、2016年~公益社団法人日本監査役協会「ケース・スタディ委員会」専門委員、2017年~2022年経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会(第2期・第3期)」委員、2019年~2021年経済産業省「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」委員、2024年経済産業省「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」委員。主に、M&A、取締役会改革・株主総会対策をはじめとする会社法およびコーポレート・ガバナンス、紛争対応を扱う。
(やまだ・ともき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所シニア・アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。文部科学省勤務を経て、2018年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2024年英国King’s College London, University of London (LL.M.)。コーポレートガバナンス・グローバルコンプライアンス、国内外のM&A・組織再編のほか、宇宙・航空・海洋分野を中心とする国際法・国際取引法関連や地方自治体関連案件に積極的に取り組んでいる。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
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