◇SH2456◇ベトナム:【Q&A】労働許可証の返却 澤山啓伍(2019/04/05)

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ベトナム:【Q&A】労働許可証の返却

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

  1. Q: 3月末で、弊社の日本人駐在員の一人が帰任することになりました。この場合、この駐在員が取得していた労働許可証を当局に返還する必要があると聞いていますが、正しいでしょうか?
  2.  
  3. A: 確かに、従前は労働許可証を取得してベトナムで勤務していた外国人労働者が帰国する場合、労働許可証を当局に返還する必要があるとされていました。しかしながら、2018年10 月8日に施行された政令140/2018/ND-CP号(「政令140号」)及び同年12月18日に施行された通達18/2018/TT-BLDTBXH号(「通達18号」)による政令11/2016/ND-CP号(「政令11号」)及びその施行細則である通達40/2016/TT-BLDTBXH号(「通達40号」)の改正により、現在ではその必要はなく、当局に通知だけをすればいいことになっています。詳細は以下の通りです。
     

 まず、従前のルールでは、労働許可証が失効した場合、理由の如何を問わずその労働許可証は回収されることになっていました。この場合、使用者は、政令11号第17条3項及び通達40号第12条に定められた回収手続に従い、労働許可証を管轄の労働傷病兵社会局(DOLISA)に返却しなければならず、その結果として所定の回収承認証を受領することになっていました。

 これに対し、政令140号及び通達18号による改正により、上述の回収及び回収承認証に関する規定は削除されました。同改正後は、労働許可証が無効となった場合、その原因により、以下のように管轄の労働傷病兵社会局又は使用者が、その旨の通知を行う必要があることになっています(通達18号第9条8項による改正後の通達40号第12条)。これらの場合、労働許可証の原本については、新たな労働許可証の取得等で必要な場合を除き、使用者又は労働者が任意に処分してよいものと思われます。

 

無効となった原因 通知者 対象となる労働者
労働契約の内容が、交付された労働許可証に合致していないこと(労働法第174条3項) 管轄の労働傷病兵社会局 在ベトナム企業等との労働契約を実施する労働者(政令11号第2条1項a号)
労働契約の終了(労働法第174条2項) 使用者 同上
経済、商事、財政等の分野での契約の期限満了又は解除(労働法第174条4項) 使用者 業務委託契約等を実施するためにベトナムで業務を行う労働者(政令11号第2条1項c号)
出向元の外国企業からの出向終了通知(労働法第174条5項) 使用者 社内異動により派遣された労働者(政令11号第2条1項b号)
就労先の在ベトナム企業等が運営を停止したこと(労働法第174条7項) 使用者 外国人労働者全般
外国人労働者が収監され、死亡し、又は裁判所によって死亡若しくは失跡を宣告されたこと(労働法第174条8項) 使用者 外国人労働者全般

 

 なお、改正後の条項では、労働許可証の期限が到来した場合の通知義務については記載されていません。この場合、労働許可証は失効します(労働法第174条1項)が、当局においてもその旨は把握できるため、特に通知は必要とされていないものと考えられます。

 また、改正後の政令及び通達のいずれにも、通知期限に関する規定は見当たりません。いずれの場合であっても、通知は書面で行われる必要があります。

 

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