◇SH2630◇ベトナム:【Q&A】労働者派遣を受け入れる場合の新ルールと留意点 井上皓子(2019/06/26)

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ベトナム:【Q&A】労働者派遣を受け入れる場合の新ルールと留意点

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 井 上 皓 子

 

  1. Q: 弊社の女性秘書が産休に入ったので、現在弊社で働いてもらっていて、そろそろ派遣期間が満了しそうな同じ秘書職の派遣労働者の派遣期間を延長してもらいたいと思います。最近、労働者派遣についてのルールが変わったと聞きましたので、新しいルールに基づいて弊社が留意すべき点などを教えてください。
  2. A: 労働派遣については、労働派遣許可の発行や労働者派遣が可能な職業一覧表等についての新しい政令29/2019/ND-CP号(以下、「新政令」という。)が今年5月5日に施行されました。この新たな政令に基づき、労働派遣を受け入れる企業として留意すべき点は、以下のとおりです。

 

1. 労働者派遣が可能な業務は限定されていること

 新政令は、旧政令と同様に、労働者派遣が許可される業務の一覧表を規定しており、ここに規定のある業務のみ派遣が可能とされています。

 旧政令では、秘書業務や翻訳・通訳業務などがこのリストに挙げられていましたが、新政令では、これに加え、船舶の管理やサービス等かかる業務、飛行機の操縦・修理等にかかる業務、石油発掘機器関連の業務等が新たに追加されています。

 

2. 労働者派遣の目的が限定されていること

 企業は、単に労働者派遣が必要であるという理由だけではなく、①労働重要の急激な増加への短期的な対応、②産休や労災等のため休職している労働者への代替、③上級専門技術を有する労働者が必要という目的のいずれかがある場合にのみ、労働者派遣を受けることができます(第20.2条)。なお、この点については旧政令から変更はありません。

 

3. 労働者派遣が許可されない場合でないこと

 新政令も、派遣労働者の権利・利益を保護するため、労働者派遣が許可されない場合について規定しています。旧政令に引き続き、派遣企業の義務として、派遣企業又は受入企業でストライキや労働紛争などが行われている、経済的原因やリストラによって解雇された労働者に代替するといった、一般的に労働環境が良くないと考えられる場合には、労働者を派遣してはならないとされています。新政令では、これらに加え、受入企業の労働環境を問わず、派遣労働者の同意が得られない場合も派遣してはならないという条件を追加しました(新政令第21条第3項)。したがって、受入企業としても、今後は派遣企業に対し、当該労働者が派遣について同意していることを示す書面を提供するよう請求することが望ましいように思います。

 

4. 派遣期間の更新

 労働法第54.2条によれば、労働派遣期間は12か月を超えてはいけないとされています。旧政令では、12か月が満了した際、派遣企業は、引き続き同じ労働者を同じ受入先に対して派遣してはいけないとされていましたが、新政令ではこの規定を含む派遣期間に関する規定は削除されました。

 このことを素直に解釈すると、新政令下では、派遣期間満了後、再度派遣契約を締結することにより、引き続き同じ派遣労働者の派遣を受けることができるとも考えられますが、12か月後の更新が、新政令で明確に許容されているわけではなく、また、労働法の「12か月」は、1本の派遣契約の期間を指すのか、通算派遣期間を指すのかについては明確ではありません。そのため、当局が、旧政令下と同様に、通算で12か月を超える場合には契約更新を認めないというリスクも現時点ではあり得るように思います。そこで、当局からこの点について明確にするガイドライン等が新たに出されるまでは、別の労働者を派遣してもらうほうがより安全であるように思われます。

 

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