ベトナム:外国人出入国管理法の改正によるビザ取得手続きの変更(上)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 鷹 野 亨
はじめに
ビザの取得は、海外でビジネスを行う際に避けては通れない手続きの一つである。国によってその取得手続きが異なり、ルールの変更も頻繁であるため、多くの進出企業を悩ませている。
ベトナムでは、2019年11月25日、ビザ取得に関するルールを定めた外国人出入国管理法47/2014/QH13号(以下、「現行法」という。)を改正する法律51/2019/QH14号(以下、「改正法」という。)が国会で可決された。改正法は2020年7月1日に施行される。本改正は、ビザ取得手続きの簡素化及び柔軟化を目指したものである。以下、改正法の主な変更点について、2回に分けてご説明したい。
▷ 電子ビザの正式導入
電子ビザは、公安省出入国管理局が運営する電子ビザ情報ホームページを通じて発行されるものであり、「EV」と表示される(改正法1条2項、3項)。現時点でも既に、電子ビザの試験的な運用は行われているが(政令07/2017/NĐ-CP号、政令17/2019/NĐ-CP号)、今後は改正法の電子ビザに関する規定が適用され、電子ビザが正式に導入されることになる。
電子ビザは、1回限りの入国が許可されるシングルビザとしてのみ発行され、その有効期間は30日を超えてはならない(改正法1条4項)。また、電子ビザ発行が許可される国は政府が指定することになっているが、現時点ではまだ公表されていない。
電子ビザ申請情報をオンラインで出入国管理局に対して提出すれば、当該情報を受理してから3営業日以内に、発行可否の結果が申請者に通知される(改正法1条9項)。
▷ ビザの種類の細分化
改正法では、現行法のビザの種類を細分化する変更がなされている(改正法1条3項)。ビジネス目的で入国する場合に影響しうる主な変更は、以下の通りである。
現行法 | 改正法 | ||
コード | 入国目的 | コード | 入国目的 |
ĐT | 外国人投資家、外国人弁護士 | LS | ベトナムで活動する外国人弁護士 |
ĐT1 | ベトナムで、1000億ベトナムドン以上の資本金を投資している、又は、政府が定める投資優遇分野若しくは投資優遇地域に投資している投資家又は外国組織の代表者 | ||
ĐT2 | ベトナムで、500億ベトナムドン以上1000億ベトナムドン未満の資本金を投資している、又は、政府が定める投資奨励分野に投資している投資家又は外国組織の代表者 | ||
ĐT3 | ベトナムで、30億ベトナムドン以上500億ベトナムドン未満の資本金を投資している投資家又は外国組織の代表者 | ||
ĐT4 | ベトナムで、30億ベトナムドン未満の資本金を投資している投資家又は外国組織の代表者 | ||
DN |
ベトナムの会社又は組織で就労する外国人 *短期で就労する者 |
DN1 | ベトナム法に基づき法人格を有する会社又は組織で就労する外国人 |
DN2 | サービスの提供、商業基盤の確立、又はベトナムが加盟国である国際条約に基づきその他活動を行う外国人 | ||
LĐ |
ベトナムで就労する外国人 *長期間にわたりベトナムで就労する者 |
LĐ1 | 労働許可証免除承認書を有する外国人労働者 |
LĐ2 | 労働許可証を取得する必要のある外国人労働者 |
さらに、改正法では「ĐT1」のビザを有する場合、一時在留許可証(テンポラリーレジデンスカード)の有効期間が最長10年まで延長される(改正法1条16項、現行法におけるĐTビザの場合の一時在留許可証の有効期間は最長5年まで)。この延長の理由は、外国人が投資優遇分野や投資優遇地域に投資することを奨励するためであると、政府が発表している。
((下)に続く)