◇SH1062◇インドネシア:FinTechに対する新規制の動向⑵―P2Pレンディング事業に関する金融庁規則の制定 前川陽一(2017/03/15)

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インドネシア:FinTechに対する新規制の動向⑵

P2Pレンディング事業に関する金融庁規則の制定

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 

 前稿「SH0990 インドネシア:FinTechに対する新規制の動向⑴―決済サービス事業に関する中央銀行規則の制定 前川陽一(2017/01/31)」で紹介した決済サービス事業に関する中央銀行規則No.18/40/PBI/2016(2016年11月9日制定)に続き、Fintech関連の規則として金融庁規則No.77/POJK.01/2016(以下「本規則」という。)が2016年12月29日付で制定され、同日より施行されている。本規則は、インドネシアにおいて情報通信技術を利用してP2Pレンディングのプラットフォームを提供する事業(本規則において「ITベース・レンディング事業」と称されている。)を対象とするものである。

 ITベース・レンディング事業者は、ローンの貸し手(プロバイダ)と借り手(レシピエント)を結びつけるサービスの提供者であり、本規則は、ITベース・レンディング事業者が自らローンの貸し手あるいは借り手となることはできないと規定している。インドネシア国内外の法人又は個人はITベース・レンディング事業者が提供するプラットフォームを利用してローンの貸し手となることができるが、借り手となる者はインドネシア国内の法人又はインドネシア国民に限られている。また、ローンの上限額が定められており、1人の借り手に対して20億ルピア(約1,600万円)である。

 ITベース・レンディング事業の許認可は2段階構成となっている。すなわち、ITベース・レンディング事業を営もうとする者は、払込資本金を10億ルピア(約800万円)以上とする要件を満たしたうえでまず金融庁に登録を行い、次いで登録後1年以内に払込資本金を25億ルピア(約2,000万円)以上としたうえで金融庁に事業許可(ライセンス)の申請を行わなければならない。スタートアップ企業の参入が多いことを考慮して、最低資本金額の要件を段階的に設けたものとみられる。ITベース・レンディング事業者は金融庁への登録をすることで事業を開始できるが、登録後1年以内に事業許可を取得できなければ、登録は抹消されてその事業を継続することはできなくなる。なお、ITベース・レンディング事業者は、ITベース・レンディング事業以外の事業を営むことはできない。

 ITベース・レンディング事業に対しては、本規則で外資出資比率に制限が課せられ、外国資本は直接又は間接に85%を超えてITベース・レンディング事業者の株式を保有できない。

 このほか事業運営に関する各種の規制が設けられている。ITベース・レンディング事業者は、少なくとも取締役1名及びコミサリス1名について、金融業での1年以上の経験を有する者をそれぞれ選任しなければならない。ITベース・レンディング事業のためのデータ施設及び災害時リカバリー施設はインドネシア国内に設置しなければならない。さらに、ITベース・レンディング事業者には、リスクマネジメント、個人情報保護など利用者保護の観点から様々な措置を講じる義務が課せられている。

 

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