◇SH1630◇インドネシア:新規事業と法規制(4)~配車アプリ事業、イーコマース事業、オンライン決済事業を例に~ 福井信雄(2018/02/07)

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インドネシアの新規事業と法規制

~配車アプリ事業、イーコマース事業、オンライン決済事業を例に~

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 福 井 信 雄

 

4. オンライン決済事業

(1) フィンテック事業の拡大

 情報通信技術の進歩に伴い急速に広がりを見せているもう一つの事業分野がフィンテック関連の事業である。インドネシアでは、①銀行口座の保有率が成人人口の40~50%程度であること、②クレジットカードの保有率が成人人口の2%程度であること、③東西に長く13000超の島を有する巨大な島嶼国家であり銀行支店の無い地域が多いこと、④1億人超のネットユーザーが存在し、モバイル端末の普及が拡大していること、等の事情からフィンテック事業にとっては非常に有望な市場と言われている。なかでも、情報通信技術を使って現金や銀行口座を使用することなく決済を可能にするオンライン決済事業のニーズが高く、インドネシアのフィンテック企業の4割以上が決済サービスを主要な事業にしているという統計データもある。フィンテック関連の事業については比較的外資規制は緩やかであり、外資の参入も歓迎されているように見受けられ、民間事業者の間では既に決済プラットフォームの主導権争いが発生しているが、他方で監督官庁であるインドネシア中央銀行が2016年頃から次々と業規制を打ち出しており、フィンテック関連の事業を行う場合には、業規制に常に注意しておく必要がある。

(2) 国家ペイメント・ゲートウェイ構想

 2017年には国家ペイメント・ゲートウェイ構想なる国家プロジェクトがインドネシア中央銀行の規則としてお披露目された。具体的には、2017年6月に決済システム業界のすべての事業者の基本的な規則としての役割を定めた国家ペイメント・ゲートウェイに関するインドネシア中央銀行規則No.19/8/PBI/2017が制定され、その後同年9月には国家ペイメント・ゲートウェイに関する事業者のビジネスライセンス、価格設定スキーム、報告書式を取得するための要件など、より詳細な事項についてのガイドラインを定めた実施細則が制定された。

 同規則によれば、国家ペイメント・ゲートウェイとは、インドネシア国家レベルで様々な決済チャネルを統合的に運用するシステムであり、インドネシアにおけるキャッシュレス社会の実現を加速させることを究極的な目標と位置付け、相互接続と相互運用を通じて安全で統一された効率的な支払いシステムを創設することを企図するものとされている。今後、国家プロジェクトとして現金以外の様々な決済手段を使ったサービスが一元化されたプラットフォームを通して提供される仕組みが構築されることになり、オンライン決済事業の市場規模も拡大していくことが予想される。

 

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