◇SH1747◇ベトナム:外国仲裁判断の執行制度と実務上の問題点(1) カオ・ミン・ティ(2018/04/05)

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ベトナム:外国仲裁判断の執行制度と実務上の問題点(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 カオ・ミン・ティ

 

 日本企業がベトナム企業と契約を締結する際には、日本の裁判所の判決をベトナム国内で執行することは困難であること、ベトナム裁判所やベトナム国内の仲裁の信頼性は発展途上であることから、日本やシンガポール・香港などベトナム国外での仲裁が紛争解決方法として合意されることが少なくない。ベトナムは1995年から外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(「ニューヨーク条約」)に加盟していることから、仲裁判断がニューヨーク条約加盟国でなされていれば、ニューヨーク条約及びこれに従って制定されているベトナム国内法に従ってベトナムにおいて承認及び執行手続を進めることは理論上可能である。しかしながら、実務上は、外国仲裁判断を最終的に執行するまでには様々な問題点があり、執行は必ずしも容易ではない。2016年7月より新民事訴訟法(法92/2015/QH13号)(以下「民訴法」)が施行されていることから、本稿では、これから2回にわたって、新法を前提としたベトナムにおける外国仲裁判断の承認及び執行の手続と実務上の問題点を概観する。

 

1. 承認及び執行の手続の概要

 外国仲裁判断をベトナム国内で執行するためには、ベトナム裁判所による承認及び執行許可の決定を取得する必要がある(民訴法第427.3条)。かかる決定がなされた外国仲裁判断は、ベトナム裁判所の有効な判決と同様の法的効力を有し、ベトナム裁判所の民事判決の執行手続に従って強制執行できる(民訴法427.2条)。

a. 承認及び執行許可手続

 自己に有利な外国仲裁判断を取得した当事者は、仲裁判断が出された日から3年以内に、司法省又は管轄のある省級人民裁判所に、仲裁判断のベトナム裁判所による承認及び執行を申し立てる必要がある(民訴法451.1条)。

 管轄裁判所は、不備のない申立てを申立人から受領(又は申立人から司法省経由で受領)してから5営業日以内に申立てを受け付けなければならず(民訴法455条)、申立ての審理手続を一時停止又は停止することができる場合を除き、申立ての受付日から2ヵ月以内に申立てを審理する期日の開始決定をしなければならない(民訴法457条。裁判所は開始決定をすべき期間を上記の期限に加えさらに2ヵ月延長することができる。)。かかる期日の開始決定の日から20日以内に期日は開かなければならない(民訴法457条)。

 期日では3名の裁判官によって外国仲裁判断がベトナムで承認及び執行されるかが決定される(民訴法458条)。民訴法上、承認執行拒否事由が定められており(民訴法第459条)、その内容はニューヨーク条約上の承認執行拒否事由(ニューヨーク条約第5条)をベースに定められている。

 下された決定に不服がある当事者は、かかる決定から15日以内に上級人民裁判所に上訴ができる(民訴法461条)。上級人民裁判所は、上訴の申立てから1ヵ月以内(民訴法462条。同条はこの期限を裁判所は2ヵ月まで延長することができると規定しているが、これはトータルで2ヵ月という趣旨だと解される。)に第一審裁判所の決定を審査し、一審決定の破棄差戻しを行うか、自ら終局的な決定を下す。

 

b. 強制執行の実施

 上記 1. a. の承認手続により外国仲裁判断のベトナムでの承認及び執行を認める終局的な決定を取得した当事者は、管轄のある執行機関に執行を申し立てることができる。管轄執行機関は、執行に関する決定を行い、かかる決定を関連当事者に送付する。執行決定の通知を受領した債務者(相手方当事者)が受領日から10日以内に任意に債務を履行しない場合、執行機関は強制執行を行う(民事判決執行法(法64/2014/QH13号修正後法26/2008/QH12号)(「民執法」)45条、46条)。強制執行は、債務者の銀行口座や資産を差し押さえるなどの方法で行われる(民執法71条)。

 

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