タイ:TISO/IBCの業務範囲の拡大(関連会社向け融資提供の追加)(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 箕 輪 俊 介
2. TISOとIBCの業務範囲の拡大
この点、商務省事業開発局長から許可を受けるにあたり、FBLを取得する方法以外に、BOIの投資奨励制度を利用する方法がある。BOIの承認を受けた場合、非税制面の恩典として、外国人事業法上の規制対象業種のうち、恩典の対象となる業務について外資100%での事業運営が認められる。BOIを経由して取得される外国人事業法の許可はForeign Business Certificate(FBC)と呼ばれる。
これまではBOIの投資恩典のうち、貸付業務を業務範囲に含むものとして明確に規定しているものはなかった[1]。今回の制度変更により、関連会社支援業務や地域統括拠点業務等に対する投資恩典である、TISOやIBCを利用することにより、海外の関連会社向けの融資に関するFBCを取得することが可能であること及び融資を行うにあたっての要件が明確になった。
なお、海外の関連会社向けの融資のうち、タイバーツ建ての融資については、貸付先がベトナムを含む近隣国(国境が接している国)の法令を準拠法とする法人に限定されていることに留意する必要がある(タイバーツ以外の通貨(例えば、米国ドル建て又は日本円建て等)による融資についてはこのような貸付先に関する制限はない。)。
TISOやIBCの業務範囲(赤字部分が今回追加された業務範囲)
TISO | IBC | |
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事業範囲 |
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主要な取得要件 |
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[1] IBCの場合、BOIによる投資恩典の取得に加えて財務センターに関するタイ中央銀行からの許可を取得することにより、融資を提供することが可能となるが、財務センターに関する許可を取得するためには、財務センターサービスの提供先となるグループ会社を複数要する等、BOIの投資恩典の取得に加えて追加の要件を充たす必要が生じる。また、TISOの場合、従前からTISOの業務範囲として貸付行為も含まれるとされていたが、貸付行為の具体的な要件は明確化されていなかった。
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(みのわ・しゅんすけ)
2005年東京大学法学部卒業、2007年一橋大学大学院法学研究科(法科大学院・司法試験合格により)退学。2014 年Duke University School of Law 卒業(LL.M.)、2014 年Ashurst LLP(ロンドン)勤務を経て、2014 年より長島・大野・常松法律事務所バンコク・オフィス勤務。
バンコク赴任前は、中国を中心としたアジア諸国への日本企業の進出支援、並びに、金融法務、銀行法務及び不動産取引を中心に国内外の企業法務全般に従事。現在は、タイ及びその周辺国への日本企業の進出、並びに、在タイ日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。
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