ベトナム:労務Q&A 従業員の個人データ保護に関する使用者の責任
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
ベトナム弁護士 Truong Thi Thu Hoai
Q: ベトナムで個人データ保護についての政令が最近成立したと聞きました。当社ではベトナム人従業員を多く雇用していますが、どのような点に注意が必要でしょうか。
A:
ベトナムでは、個人データ保護政令(政令第13/2023/NĐ-CP号、以下「政令13号」といいます。)が2023年7月1日に施行されました。政令13号は、ベトナム国内か国外を問わず、ベトナム人の個人データを管理又は処理する者の責任を定めています。
ベトナムで事業を行っている現地法人は、多かれ少なかれベトナム人従業員を雇用しており、その関係で従業員の個人情報を収集し、保存し、使用しているかと思います。その場合、政令13号の適用を受けることになり、同政令に定められたルールを遵守する必要があります。
具体的には、政令13号に基づき、使用者が従業員の個人データを処理するにあたって必要な対応のうち、主要なものとして以下の3つがあげられます。なお、ここで、データの「処理」とは、「個人データの収集、記録、分析、確認、保存、修正、公開、結合、アクセス、回収、暗号化、復号化、コピー、共有、送信、提供、転送、削除、破棄又はその他の関連する行為等、個人データに影響する一つ又は複数の活動」と広く定義されています(政令13号第2条7項)ので、使用者が従業員の個人データを取得し、会社のパソコンに保存するだけでも、個人データの処理に当たり、以下の対応が必要となります。
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(さわやま・けいご)
2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。
現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
(Truong Thi Thu Hoai)
2013年Hanoi Law University及び名古屋大学日本法教育研究センター(ハノイ)卒業後、2019年に名古屋大学大学院法学研究科にて法学博士号を取得。翌年ベトナム弁護士資格を取得し、長島・大野・常松法律事務所ハノイオフィスに入所。日越双方の法律に関する知識を活かして、ベトナムで事業活動を行う日本企業へのベトナム法のアドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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