ベトナム:新不動産事業法の施行(上)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 井 上 皓 子
はじめに
SH4335、SH4338及びSH4339(ベトナム:不動産事業法改正草案――外資企業にはより高い障壁か?(上)・(中)・(下) 井上皓子(2023/02/28)・(2023/03/02)・(2023/03/03))で不動産事業法の改正草案について取り上げたが、現行の不動産事業法を全面的に廃止し、これに代替する新しい不動産事業法が2023年11月に成立し、その内容も公表された。施行時期は、2025年1月1日と定められた。現行法が施行されたのは2014年であり、この間、不動産市場の発展も著しいことから、現行法の問題点等を解消し、不動産市場の透明性と安全性を確保することを目的とした新法の制定であると謳われている。
不動産事業法は、建物・住宅等の不動産の取引に関する事業と、これらに関連するサービスに関する事業について規制する法律である。従前から、外資企業が不動産事業を行うにあたっては、外資企業が行いうる事業分野や取引形態の制限、最低資本金の要求等の規制があり、外資企業の不動産事業への参入には一定のハードルがあった。一方で、経済発展を続けるベトナムでの不動産取引の需要は高く、日系企業を含む外資企業としても、関連サービスを含む市場参入についての注目度は高いとされていた。
新法は、全83条からなり、その内容も多岐にわたるが、本稿では現行法からの主要な変更内容、前回取り上げた草案からの修正点も含め、外資企業にとって特に重要と思われる点を中心に取り上げる。
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(いのうえ・あきこ)
2008年東京大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2018~2020年、長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス勤務。日本にお