欧州委員会が外国補助金規則に基づきUAE企業による買収を条件付きで承認
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 臼 杵 善 治
弁護士 髙 嵜 直 子
弁護士 松 本 千 佳
1 はじめに
2024年9月24日、欧州委員会(以下「EC」という。)は、外国補助金規則[1](以下「FSR」という。)に基づき、Emirates Telecommunications Group Company PJSC(以下「e&」という。)による、チェコの事業を除くPPF Telecom Group B.V.(以下「PPF」という。)の買収を条件付きで承認した(以下「本事案」という。)[2]。本事案では、同年4月26日に事前届出(notification)が行われ、同年6月10日に詳細審査の開始が決定されていたものである。
e&は、アラブ首長国連邦(以下「UAE」という。)を拠点とする通信事業者で、UAEの政府系ファンドが支配するエミレーツ投資庁(以下「EIA」という。)の支配を受けている。
PPFは、チェコ、ブルガリア、ハンガリー、セルビア、スロバキアで合計1000万以上の顧客に通信サービスを提供している、オランダに本社を置く通信事業者である。
本事案は、初めてFSRに基づく詳細審査(in-depth investigation)が行われた企業結合案件である。また、法定の審査期限(2024年12月4日)よりも早く取引が(条件付きではあるが)承認された点にも特徴がある。ただし、他の詳細調査でも同様の対応が期待できるとまではいえず、引き続き余裕を持った取引のスケジューリングが必要であろう。
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(うすき・よしはる)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。
2003年慶應義塾大学法学部卒業。2006年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第一東京)。2015年University of London, LL.M. in Competition Law修了。
公正取引委員会による審査手続対応、海外当局による調査手続対応、国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポート、競争法コンプライアンスマニュアル作成・競争法コンプライアンストレーニング、流通取引規制に関するアドバイス、景品表示法対応等の多数の案件を取り扱っている。
(たかさき・なおこ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。2004年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院卒業。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2012年Stanford School of Law(LL.M.)修了。2013年ニューヨーク州弁護士登録。インドネシア及びシンガポールの大手法律事務所、経済産業省通商政策局国際経済紛争対策室への出向経験を有する。主な業務取扱分野は、WTO/国際通商法務、海外事業展開の支援等。
(まつもと・ちか)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年一橋大学法学部法律学科卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
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