タイ:タイ版フランチャイズ・ガイドラインの施行(下)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 箕 輪 俊 介
タイにおける競争法関連の規制強化の一環として、2019年12月6日付で取引競争法のフランチャイズ・ガイドライン(the Notification of the Trade Competition Committee on Guidelines for Consideration of Unfair Trade Practices in Franchise Business(以下、「タイ版フランチャイズ・ガイドライン」という。))が公布され、2020年2月4日付で発効したため、引き続き本項にて紹介する。
日本のフランチャイズ・ガイドラインとの比較
日本版フランチャイズ・ガイドラインとの比較は以下のとおり。なお、競争法関連の規制に焦点を当てているため、中小小売商業振興法や日本フランチャイズチェーン協会「倫理綱領」との比較は以下には記載していない。
タイ | 日本 | |
規制法理 | タイ版フランチャイズ・ガイドライン | 日本版フランチャイズ・ガイドライン |
管轄官庁 | 取引競争委員会 | 公正取引委員会 |
契約締結前の開示事項 |
以下の事項の事前開示が義務づけられている。
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中小小売商業振興法上の事前開示義務とは別の観点(独占禁止法違反行為の未然防止の観点)から、ガイドライン上、以下の事項の事前開示が推奨されている。
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開示しない場合の効果 |
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欺瞞的顧客誘引(不公正な取引方法の一般指定第8項)に該当する虞あり |
加盟者に対する優先出店権の付与 | あり | なし(事前に開示しておくべき事項のひとつとして、「加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容」が規定されている) |
違反行為 |
上述のとおり、以下の類型の行為が取引競争法違反を構成しうるものとして挙げられている。
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優越的地位の濫用事例として、以下のものが挙げられている。
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これまでタイではフランチャイズに関して、加盟者保護の立場にたったガイドラインも特段設けておらず、適切な規制がなされているとは言い難い状況であったものの、近時の競争法関連の摘発例の増加に鑑みると、このガイドラインの制定を機に、フランチャイズ規制が今後活発化する可能性があることについては留意する必要がある。
以 上