ベトナム:再生可能エネルギーの固定買取価格と外資規制
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
ベトナム政府は4月6日、太陽光発電開発の奨励に関する首相決定第13/2020/QD-TTg号を公布し、9.35セント/kWhの固定買取価格の期限が2019年6月末に到来して以降9か月以上価格が決まっていなかった太陽光発電の買取価格を最終決定した。
首相決定第13号による太陽光発電の買取価格の他、現時点以降に商業運転を開始する各種再生可能エネルギーによる発電の固定買取価格は、以下の通りである。なお、金額はいずれも付加価値税を含まない金額であり、米ドル建ての金額は、各首相決定においてベトナムドンの金額とともに併記されている金額である。いずれの決定においても、今後の為替変動によりベトナムドン建ての買取価格が調整される(すなわち金額は米ドル建てのものが基準となる)ことになっている。
(ア) 太陽光発電の買取価格(首相決定第13/2020/QD-TTg号)
(国家送電網に接続し、太陽電池のセル変換効率が16%超又はモジュール変換効率が15%超のもの)
条件 | 設置場所 | 買取価格(1キロワット時(kWh)当たり) | 適用期間 |
2019年6月30日までに営業開始したもの | すべて | 2,086ドン(9.00セント) | 商業運転を開始した日から20年間 |
Ninh Thuan省内のもので、電力開発マスタープランに採用され、2021年1月1日以前に商業運転を開始したもの | |||
2019年11月23日より前に投資方針の承認を受け、2019年7月1日~2020年12月31日に商業運転を開始するもの | 陸上 | 1,644ドン(7.09セント) | 商業運転を開始した日から20年間 |
水上 | 1,783ドン(7.69セント) | ||
屋上 | 1,943ドン(8.38セント) | ||
2019年11月23日以降に承認を受けたものや2021年以降に商業運転を開始するもの | すべて | 入札制 | 規定なし |
(イ) バイオマス発電のFIT価格(首相決定第8/2020/QD-TTg号)
条件 | 方式 | 買取価格(1キロワット時(kWh)当たり) | 適用期間 |
規定なし | 熱電併給(コジェネレーション) | 1,634ドン(7.03セント) | 規定なし |
その他のバイオマス発電 | 1,968ドン(8.47セント) | 規定なし |
(ウ) 風力発電のFIT価格(首相決定第39/2018/QD-TTg号)
条件 | 設置場所 | 買取価格(1キロワット時(kWh)当たり) | 適用期間 |
2021年11月1日以前に商業運転を開始し、国家送電網に接続したもの | 陸上発電 | 1,928ドン(8.5セント) | 商業運転を開始した日から20年 |
洋上発電 | 2,223ドン(9.8セント) |
なお、太陽光発電事業を行うことについて外資規制は特段見当たらないが、事業を開始するには、投資登録証、土地使用権及び建設許可証の取得、電力買取先であるベトナム電力総公社(EVN)及び送電会社との契約の締結、並びに発電ライセンスの取得(その前提として電力開発マスタープランへの採用、要件を満たした人員、設備、環境評価レポート等の取得)等が必要であり、その手続きの煩雑さは生半可なものではない。そのため、実務では、ローカル企業が主体となって開発段階を進め、発電開始前後で外資がその事業会社を買収する形で参入する手法が多く見受けられる。
また、報道によれば、2020年5月11日時点で、ベトナムでは、92の太陽光発電プロジェクトと10の風力発電プロジェクトが稼働しており、設備容量は全体で約600万キロワットとなっているとのことである。