ベトナム:新労働法による変更点⑬
年次有給休暇日数の算出(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 井 上 皓 子
今回は、新労働法及びその施行規則である政令145/2020/NÐ-CP(2021年2月1日施行、以下「新政令」)における年次有給休暇の旧法令からの改正内容についてご説明します。
2 年次有給休暇の給与計算
旧政令下では、有給休暇中の賃金は、有給休暇取得時の前月分の給与を日割りしたものとされていました。このため、前月と当月の給与が異なる場合、厳密には、当月分の給与を日割計算して休暇分を控除し、前月分の給与を日割りして支給する(つまり、昇給した場合は、当月分の月給よりも若干少ない金額になる)ということになり、繁雑な計算が必要とされていました。新政令では、有給休暇中の賃金は有給休暇取得時の労働契約上の給与とされたことから、単に、有給休暇の取得を考慮せずそのまま月給を支給すればよいことになりました。
また、退職時に未消化の有給休暇は金銭で清算されることになりますが、この場合の基礎となる給与について、旧政令下では、6か月以上勤務した場合とそうでない場合を区別して、最大で6か月間の直前の労働期間の給与の平均値を取っていました。新政令では、一律に退職前月の労働契約に基づく給与としています。
3 労働期間に1か月未満の端数が生じた場合の年次有給休暇
旧労働法下では、労働者の労働期間に1か月未満の端数が生じた場合の年次有給休暇の取扱いに関する規定はありませんでした。新政令では、この場合、労働者の総労働日数と有給休暇日数が、労使間で合意された月の通常の労働日の50%以上となる場合、年次休暇を計算するために、その1か月未満の端数は1か月に切り上げるとしています。
例えば、入社後6か月を経過した従業員が、6か月目は所定労働日20日のうち10日しか勤務していなかったとしても、6か月フルで勤務した労働者と同じように、6日の有給休暇が付与されることになります。
以 上
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(いのうえ・あきこ)
2008年東京大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2018年より、長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス勤務。
日本企業によるベトナムへの事業進出、人事労務等、現地における企業活動に関する法務サポートを行っている。
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