◇SH3631◇ベトナム:労働許可証関連手続における注意点 澤山啓伍(2021/05/24)

未分類

ベトナム:労働許可証関連手続における注意点

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 「ベトナムで就労する外国人労働者及びベトナムにおける外国組織で就労する労働者に関する政令第152/2020/NÐ-CP号」(以下「新政令」といいます。)における外国人労働者の労働許可証に関連する手続きに関して、実務上注意が必要な点を3点紹介します。

 

1. 労働需要登録

 新政令に基づいて労働許可証を取得する場合、その前段階として、労働需要登録と呼ばれる手続を行う必要があります。これは、使用者が、ベトナム人労働者では対応できない職能への外国人労働者雇用の必要性を確定し、当局に状況を報告し、その承認を取得するという手続きです。

 この手続き自体は従前からあるもので、新政令により当局の処理期間は15営業日から10営業日に短縮されたものの、勤務開始日の30日前までに申請が必要であるため、外国人労働者の新規赴任が決まったら、早めに手続きを行うことが肝要です。

 また、SH3561 ベトナム:ベトナムでの就労が認められる外国人労働者の範囲 澤山啓伍(2021/04/01)でご説明したとおり、新政令では、旧政令のように「企業が専門家であると認定した証明書」によって簡単に専門家としての要件充足を証明することができず、ベトナムで従事する予定の業務に適合した分野での学歴及び職歴が求められます。この関係で、労働需要登録の段階でいかにその就労予定者の学歴及び職歴に適合する職務内容を登録するかが重要になってきます。

 

2.労働許可証の期間延長

 SH3384 ベトナム:新労働法下での労働許可証の延長手続 澤山啓伍(2020/11/16)でも解説したとおり、現行の労働法及び新政令では、労働許可証の当初2年間の有効期間が満了した後外国人がベトナムでの就労を継続する場合には、以前の労働許可証の再発行手続きではなく、延長手続きを行うことを定めています(労働法第155条)。

 現行の労働法が施行された2021年1月1日以前に労働許可証を取得し、同法施行以降にその有効期間が満了した場合に、この延長手続きができるのかどうかは法令上明確ではありませんでしたが、当局は、2月頃以降延長手続きではなく、新政令に基づく新たな労働許可証の取得を求めています。SH3384の記事にあるように、新規発行申請の場合は、延長の場合よりも多くの書類が求められますので、早めに準備しておくことが重要です(特に犯罪経歴証明書の取得には時間を要します)。

 なお、将来労働許可証の延長の対象になる場合、延長申請手続は、労働許可証の残存有効期間が5日以上45日以下であることが求められており、この期間中に申請ができないと再度新規発行申請が必要になってしまうものと思われますので、この点もご留意ください。

 

3. 外国人労働者使用の定期報告義務

 新政令では、外国人労働者を雇用する使用者は、外国人労働者の雇用状況について毎年7月5日までに半期報告を、翌年1月5日までに年次報告を労働局に提出することが義務づけられています(新政令第6条)。この報告義務は、旧政令でも定められていましたが、新政令では報告期限が明確になっていますので、注意が必要です。

 


この他のアジア法務情報はこちらから

 

(さわやま・けいご)

2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。

現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました