SH3674 バーチャルオンリー株主総会を可能にする改正産競法の成立・施行 生方紀裕/森真幸人(2021/07/06)

組織法務株主総会

バーチャルオンリー株主総会を可能にする改正産競法の成立・施行

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 生 方 紀 裕

弁護士 森 真 幸 人

 

1 経緯

 2021年6月9日、「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」(以下「改正産競法」という。)が参議院本会議で可決され成立した。上場会社が、物理的な総会会場を用意せずすべての株主がオンラインのみで出席する「場所の定めのない株主総会」、いわゆるバーチャルオンリー株主総会を開催することを可能にするための規定を盛り込んだ改正である。改正産競法は、6月16日に公布され、バーチャルオンリー株主総会に関する部分は同日施行された(改正産競法附則1条1号)。

 また、6月16日、パブリックコメント手続を省略して、「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関する省令」(以下「省令」という。)が成立し、施行された。これに伴って、同日、産業競争力強化法第66条第1項に規定する経済産業大臣および法務大臣の確認にかかる審査基準(以下「審査基準」という。)、申請書の様式、「産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会に関するQ&A」(以下「Q&A」という。)[1]がそれぞれ公表された。

 

2 バーチャルオンリー株主総会を開催するための要件

 下表は、バーチャルオンリー株主総会を開催するための4つの要件(改正産競法66条1項、2項)の概要を整理したものである。

要 件 概 要
  1. ①「上場会社」であること
発行する株式のうち一部でも上場されていればよい。  
  1. ②「省令要件」(省令1条)該当性について法務大臣および経済産業大臣の確認(「大臣確認」)を受けること
大臣確認は、バーチャルオンリー株主総会を可能とする定款の定めを設ける前提として必要となる。  
  1. ③「定款の定め」があること
株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨の定款の定めが必要である。施行後2年間に限り、当該定款があるものとみなすことができる(改正産競法附則3条1項)。  
  1. ④ 招集決定時に「省令要件」を充足していること
大臣確認時のみならず、バーチャルオンリー株主総会の招集決定時においても、省令要件を満たしている必要がある。招集決定時の省令要件該当性については、招集決定者が確認を行う。  

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(うぶかた・のりひろ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2006年東京大学法学部卒業。2007年弁護士登録(第二東京)。2013年ミシガン大学ロースクール修了(LL.M., in International Taxation)。2013年~2014年豪州ブリスベンのClayton Utz法律事務所勤務。2016年から早稲田大学法務教育研究センター講師(租税法担当)。主に、株主総会指導、敵対的買収防衛、アクティビスト株主対応を含む一般企業法務、M&A及び商事訴訟などを取り扱う。

 

(もり・まさと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2019年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2020年弁護士登録(第二東京)。株主総会・投資主総会指導、事業再生・倒産案件及び訴訟案件などを取り扱う。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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