◇SH3784◇ベトナム:新しい環境保護法下における拡大生産者責任(EPR)(2) 中川幹久(2021/10/12)

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ベトナム:新しい環境保護法下における拡大生産者責任(EPR)(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 中 川 幹 久

(承前)

政令草案における拡大生産者責任に関する主なポイント

 新法の施行細則となる政令について本年7月に公表された第二草案(以下「本政令草案」)では、上述したリサイクル責任及び回収・処分責任の具体的な内容・運用などについて、概要、以下のように定めている。

(1) リサイクル責任

 本政令草案では、上述したリサイクル責任の対象となる製品・包装を列挙し(本政令草案の別紙55)、基本的に、かかる対象製品・包装をベトナム国内市場において販売するために製造・輸入した者が、所定のリサイクル責任を負うこととしているが、包装については、当該包装が用いられた製品を製造・輸入した者が、包装の製造・輸入者に代わって責任を負うこととしている。

  1. •  対象となる製品:電灯、パソコン、携帯電話・タブレット端末、AV機器(カメラ、ビデオ)、電化製品(テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、食洗機、オーブン等)、ソーラーパネル、蓄電器、電池、潤滑油、チューブ・タイヤ、車両(2輪及び4輪)、重機など
  2. •  包装が対象となる製品:(それぞれ所定の条件を満たす)食品・飲料、洗剤・化粧品・シャンプー類・医薬品、500ml以上の容量のその他の製品
  3. •  施行時期:対象となる製品・包装毎に、その施行日が定められており、製品については概ね2024年1月1日に(一部、2023年1月1日に施行のもの、及び2025年1月1日に施行のものがある)、包装については2023年1月1日に施行される。

 ベトナム国内市場で販売するために対象製品・包装を製造・輸入した者は、以下のリサイクル率でリサイクルを行うか、以下の財政貢献金をVEPFに支払う必要がある。なお、輸入者については、リサイクルを行うことを選択する場合、これを自ら行うことは認められておらず、リサイクル業者等に委託する必要がある。

  1. •  リサイクル率:製品・包装毎に定められる回収係数に、処分係数を掛け合わせて算出する。回収係数・処分係数については具体的な数値は本政令草案では示されておらず、天然環境資源省が別途定めることとされている。
  2. •  財政貢献を求められる金額:以下の計算式により算出する。リサイクル・コスト基準及び管理費については具体的な数値は本政令草案では示されておらず、天然環境資源省が別途定めることとされている。
[財政貢献金額]

[リサイクル率] × [製品・包装の分量] × [リサイクル・コスト基準] [管理費]
 

(2) リサイクル・回収困難な製品・包装の回収・処分責任

 本政令草案では、有害物質を含有する、又はリサイクル・回収が困難な製品・包装として、上述の回収・処分責任の対象となる製品・包装について、本政令草案の別紙61に列挙する形で以下のものを明記している。こうした対象製品・包装をベトナム国内市場において販売するために製造・輸入した者のうち、以下の所定規模を満たす者は、毎年3月31日までに当該製品・包装の種類及び分量を所定のフォームに従って管轄当局に申告するとともに、以下の財政貢献金額をVEPFに対して支払う義務を負う。

  1. •  対象製品・包装:殺虫・殺菌剤・その他化学物質含有製品・包装、オムツ・使い捨てウエットタオル等、ガム、タバコ、プラスティックを原材料とする製品・包装、ナイフ・フォーク・スプーン・箸・カップ・箱・使い捨て食品ラップ、ストロー、衣類、革製品・鞄・靴・サンダル、玩具、インテリア家具、プラスティック製建設資材
  2. •  所定規模:以下のいずれかを満たす場合。

    1. ➢    対象製品・包装にかかる年間売上額が150億ベトナムドン(約7100万円)以上である。
    2. ➢    対象製品・包装の年間輸入額が100億ベトナムドン(約4700万円)以上である。
    3. ➢    製造の原材料としてプラスティックを10トン以上使用している。
  3. [注:「年間」あたりの分量であるのか、それ以外の基準によるのか不明である。]
  4. •  財政貢献金額:対象製品・包装毎に、一定数量・分量あたりの金額(例えば、ストローの場合1kgあたり2000ベトナムドン、タバコの場合20本あたり100ベトナムドン)、あるいは、年間で市場に出荷された総額に対する割合(例えば、オムツ・ウエットタオル類の場合、年間で市場に出荷された総額の1.5%)の形で定められている。

(3) 違反に対する延滞金等の徴収

 リサイクル責任に基づくリサイクル義務の履行またはこれに代わる財政貢献金の支払いに違反が認められる場合、違反した製造者・輸入者は、行政手続違反に対する制裁に加え、未履行・未払金の遡及的な請求に追加して30%の延滞金を徴収され、不払いが続いた場合にはさらに10%加重された延滞金が課される。他方、リサイクル・回収困難な製品・包装の回収・処分責任に基づく財政貢献金の未払いが認められる場合、違反した製造者・輸入者は、行政手続違反に対する制裁に加えて50%の延滞金を徴収され、不払いが続いた場合にはさらに10%加重された延滞金が課される。


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(なかがわ・もとひさ)

長島・大野・常松法律事務所ホーチミンオフィス代表。1999年慶応義塾大学法学部法律学科卒業。2003年第一東京弁護士会登録。2009年 Stanford Law School(LL.M.)卒業。2009年~2010年Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP(ニューヨーク)勤務。2011年11月から約2年半、アレンズ法律事務所ホーチミンオフィスに出向。ベトナム赴任前は、M&Aその他の企 業間取引を中心とした企業法務全般にわたるリーガルサービスを提供し、現在は、ベトナム及びその周辺国への日本企業の進出及び事業展開に関する支援を行っ ている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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