SH4018 特許庁、「スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査研究報告書(令和3年度 特許庁調査研究報告書)」を公表 鷲見彩奈(2022/06/07)

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特許庁、「スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査研究報告書(令和3年度 特許庁調査研究報告書)」を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 鷲 見 彩 奈

 

1 はじめに

 政府は、2022年5月31日、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)」を発表し、4つの計画的な重点投資の柱の1つとしてスタートアップへの投資を掲げる[1]など、スタートアップ支援を行っていく姿勢を明らかにした。

 特許庁は、2017年度に「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究」(以下「前回調査」という。)を実施し、その結果を踏まえて、2018年度より知財コミュニティポータルサイト「IP BASE(IP KNOWLEDGE BASE for Startup)」(以下「IP BASE」という。)[2]を開設し、スタートアップに対し、知財の重要性に気付く場を提供するとともに、知財専門家へのアクセス向上のための情報発信等を行っている。また、特許庁は、ビジネス専門家と知財専門家からなる知財メンタリングチームを組織し、スタートアップの知財戦略の構築を支援する、知財アクセラレーションプログラム「IPAS(IP Acceleration program for Startups)」(以下「IPAS」という。)[3]を実施している。

 こうした施策の開始から4年が経過していることから、現状の支援実態とニーズとの間のギャップや新たに必要とされる支援策を把握し、適切な支援策を検討するための基礎資料として本報告書[4]が作成された。

 本報告書は、スタートアップおよびその支援機関に対する国内アンケート調査の結果をもとに、スタートアップ向けの知的財産に関する支援策の在り方に対する提言を「本編」、提言の根拠となる分析を「分析編」、そのバックデータを「資料編」として、合計582頁にわたりまとめられている。紙幅の都合上、本稿では、「本編」を概観する。

 

2 本報告書の概要

 ⑴ 日本のスタートアップを取り巻く課題と本調査の問題意識

 わが国では、2014年以降、大学発ベンチャー企業の数は増加傾向にあり、2020年度には2,905社、前年からの増加数は339社と、企業数・前年からの増加数ともに過去最高となった。一方で、日本のユニコーン企業数は、2021年末の時点では6社で世界第13位、ユニコーンの時価総額ではわずか8.82十億ドル(世界第18位)と、第1位の米国(488社・1643.46十億ドル)や第2位の中国(170社・575.13十億ドル)とは、圧倒的な差がある(図表3・図表4)。

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(すみ・あやな)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2014年東京大学法科大学院卒業。2015年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主な取扱い分野は、知的財産法。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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