SH4202 インド:競争法改正法案(Competition (Amendment) Act, 2022)(1) 山本匡/小川聖史(2022/11/16)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

インド:競争法改正法案(Competition (Amendment) Act, 2022)(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 山 本   匡

弁護士 小 川 聖 史

 

はじめに

 インドの2002年競争法(Competition Act, 2002)(以下「インド競争法」という。)は、反競争的協定及び市場支配的地位の濫用行為に関する条項が2009年に、企業結合に関する条項が2011年に施行された。特に企業結合に関する条項の施行前には、施行後の日本企業のM&Aの実行に混乱が生じるのではないか懸念されていた。同法が全面的に施行されてから約10年が経過した現在においては、幸い、施行当時懸念されていたほどの混乱は生じていないように思われる。

 インド競争法は全面的に施行されてからこれまで一度も改正されてこなかったが、2022年競争法改正法案(Competition (Amendment) Act, 2022)(以下「改正法案」という。)が2022年8月に議会に提出された。最終的な改正内容は今後の議会での審議次第であるが、企業結合の届出基準として取引価値基準が導入されること、日本企業が届出不要と整理する際に利用してきた小規模取引の除外(de minimis exemption)が取引価値基準を充足する場合には使えなくなることが想定されることなど、実務上影響が大きい改正となる可能性がある。以下では、改正法案中の企業結合に関する改正点について概説する。

 

1 取引価値基準(Transaction Value Threshold)の導入

 現在、インド競争法に基づく企業結合の届出の要否は、企業結合の当事者及びそのグループのインド国内外における資産額及び売上高を基準として判断される[1]

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(やまもと・ただし)

2003年弁護士登録。2009年から2017年にかけて、インド・シンガポールで勤務。2015年からヤンゴンにて随時執務。新興国を中心に海外進出、各種リーガル・サポートに携わっている。

 

(おがわ・さとし)

長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2008年一橋大学法科大学院修了、2009年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2015年University College London修了(LL.M. in Competition Law)、2015年~2017年経済協力開発機構(OECD)金融企業局競争課勤務。2018年~2019年経済産業省・公正取引委員会・総務省「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」委員。主な取扱分野は独占禁止法・競争法であり、特に、国内外競争当局との折衝や、海外競争法対応、デジタル分野に関する独禁法上の問題など先端的な競争法関連案件を中心としてアドバイスを提供している。

 

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