2020年4月16日号
ベトナム:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
はじめに
緊急事態宣言の発令以降、大都市圏の多くの企業が急速なテレワークへの切替えや事業体制の見直しに追われる一方、3月決算企業では決算・監査対応を中心に多くの課題が生じるなど、事業への影響は日々拡大しています。多くの海外地域においては引き続き厳格な外出制限や営業禁止等のロックダウン措置が継続している一方、一部地域においては行動制限の軽減・解除に向けた議論が始まるなど出口戦略の模索も始まりつつあります。
本記事では速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月15日夜時点で判明している情報に基づいています。
全体概況 死亡者:0人、感染者数:267人(4月15日現在) ベトナム国内での感染者数は比較的抑えられており、死者は0、感染者の半数は既に完治しているが、ベトナム政府は4月1日から15日間全土での「社会隔離」の実施を指示し、全ての国民に自宅待機を求めている。報道によれば、ハノイ市及びホーチミン市を含む12省市ではこの措置を少なくとも22日まで継続する指示が出たとのことである。 |
主な政府発表
- ・ 4月1日から15日間、全土での「社会隔離」の実施を指示する首相指令第16/CT-TTg号を公布。全ての国民は自宅で待機し、(a)食料、食品、薬品の調達や健康診断、自然災害、火災、救急等緊急の場合、(b)国家機関、外交機関、必需品、必需サービスを生産・提供する企業・工場等で働く目的等、本当に必要な場合に限って外出するよう求めるとともに、他人と接触する際には2メートル以上の間隔を保ち、会社・学校・病院の外部や公共の場所において3人以上で集まらないことを求めている。首相指令第16/CT-TTg号の解説として政府官房が発行した2020年4月3日付け公文書第2601/VPCP-KGVXでは、事業の継続が認められる民間企業として以下を挙げている。工場・製造施設、交通・建設工事、食品・食料・医薬品・ガソリン・石油・電気・水・エネルギー等必須のサービス又は商品を提供する事業所、教育機関、銀行、金庫、公証・法務サービス・車両登録・担保付取引登録等銀行業務又は企業の補助サービスに直接関連するサービス、証券、郵送・通信、輸送補助サービス、輸出入、ヘルスケア・医療サービス、葬儀サービス等。報道によれば、ハノイ市、ホーチミン市、北部のラオカイ省、クアンニン省、バクニン省、ニンビン省、中部のダナン市、クアンナム省、南部のビントゥアン省、タイニン省、中南部カインホア省、北中部ハティン省の計12省・中央直轄市ではこの措置を少なくとも22日まで継続するよう首相の指示があったとのことである。
- ・ 首相指令第16/CT-TTg号には、一部例外を除く公共交通手段による旅客運搬の停止も含まれている。これに基づき、各地で路線バス、タクシー、配車サービス等の運行停止、国内航空便、南北鉄道の大幅減便が行われている。
- ・ COVID-19の流行により影響を受けた企業に対して、労働組合費や社会保険料の支払期限を延期する公文書が発行されている[1]。また、同様に税金や土地賃借料の支払期限の延期を定める政令第41/2020/ND-CP号も公布された。
渡航情報
- ・ 2020年3月22日以降の全ての外国人の入国の原則停止措置(政府官房通知第118/TB-VPCP号)は継続中である。
- ・ 4月1日から同15日までの間、外交目的等で必要な場合を除き、ベトナム着の全国際旅客便の運行を停止する他、国内線もハノイ、ホーチミン、ダナンの三都市を発着する数便の他は運航を停止している。16日以降もハノイ/ホーチミン市間の便が多少増える他はこの方針に変更はない模様である。
- ・ ベトナム航空は日本路線の全区間の運休を5月末まで延長した。日系航空会社も日越間の航空便を運休又は減便し、4月15日までの期間はベトナムから日本への復路便のみ運行している。
(さわやま・けいご)
2004年 東京大学法学部卒業。 2005年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2011年 Harvard Law School卒業(LL.M.)。 2011年~2014年3月 アレンズ法律事務所ハノイオフィスに出向。 2014年5月~2015年3月 長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務 2015年4月~ 長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス代表。
現在はベトナム・ハノイを拠点とし、ベトナム・フィリピンを中心とする東南アジア各国への日系企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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