◇SH2522◇シンガポール:統合型リゾート・カジノ規制の動向――日本の特定複合観光施設区域整備法と比較して 松本岳人(2019/05/09)

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シンガポール:統合型リゾート・カジノ規制の動向

~日本の特定複合観光施設区域整備法と比較して~

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 松 本 岳 人

 

 2019年4月3日、シンガポールにおける有名な観光地であるマリーナ・ベイ・サンズ及びリゾート・ワールド・セントーサの2つのカジノ施設を含む統合型リゾート(Integrated Resort。以下「IR」という。)について、シンガポール政府と各運営事業者の間で総額約90億シンガポール・ドルを投じる拡張計画の包括合意がされたことが発表された。かかる拡張投資にあわせてカジノに関する規制も一部変更される予定である。

 一方の日本では、2019年3月26日、特定複合観光施設区域整備法の一部の施行期日を定める政令及び特定複合観光施設区域整備法施行令が成立したことにより、2019年4月1日から特定複合観光施設区域整備法(以下「IR実施法」という。)の一部が施行され、カジノ施設を含む特定複合観光施設の開発に向けた動きが進んでいる。日本のIR実施法の制定に当たってはシンガポールのCasino Control Actの規制内容及び枠組みが多く参考にされていることから、シンガポールのCasino Control Actと日本のIR実施法の現状の主な規制状況を改めて比較してみたい。

 

1. カジノ施設規模

 シンガポールでは、カジノ施設の大きさは2施設とも1.5万平方メートルの範囲で許可を受けている(IR施設全体に占める割合は約3.1%)。シンガポールのIR施設の拡張にあわせてカジノ施設の面積の拡張も認められる予定であるが、IR施設全体に占める割合は2.3%ほどに下がる見込みである。

 一方、日本のIR実施法では、シンガポールの規制も参考に、カジノ行為区画の面積の上限はIR施設の床面積の合計の3%と定められた。

 

2. 入場料

 シンガポールでは、ギャンブル依存症対策の一つとして、カジノに入場するシンガポール国民及び永住権保持者に対して従来1日(24時間)あたり100シンガポール・ドルのカジノ施設への入場料(年間入場料は2,000シンガポール・ドル)を課していた。この入場料については、2019年4月4日から1日(24時間)あたり150シンガポール・ドル(年間入場料は3,000シンガポール・ドル)に引き上げられた。

 一方、日本では、シンガポールの水準も参考に入場者(日本国内に住居を有しない外国人を除く。)に対し、国が賦課する入場料として24時間あたり3,000円、またそれと別に認定都道府県等入場料として3,000円を賦課することとしている。

 

3. 認定施設数

 シンガポールでは、カジノの数を2つに制限し、開業から当初の10年間の独占権を付与していた。マリーナ・ベイ・サンズ及びリゾート・ワールド・セントーサの両IR施設とも2016年にカジノライセンスの3年間の更新が認められ、さらに、拡張投資を条件に2030年までの独占権の更新が認められる。

 一方、日本ではIR施設が認められる認定区域整備計画の数の上限は3とされており、今後候補地の選定が進む予定である。

 

4. カジノ税

 シンガポールでは、カジノ事業者がシンガポール政府に納めるカジノ税として、カジノ事業の総粗収益に課税される。その税率は、顧客層により異なっており、一般顧客は15%、カジノ内の口座に10万シンガポール・ドル以上の預託金を持つ特別顧客については5%とされている。また、2022年からは、一般顧客22%、特別顧客8%に引き上げられる予定である。

 一方、日本でも上記の仕組みも参考に、カジノ事業者に対し、カジノ事業粗収益に対して国庫納付金として15%及び認定都道府県等納付金として15%(計30%)の納付を義務付けている。

 シンガポールでは、カジノ施設を含むIRへの投資の拡張を認める規制緩和をする一方で、ギャンブル依存症対策のために入場料の引上げ、カジノ税を増税するなどの規制強化もあわせて実施するなど柔軟な政策対応がとられている。先行するシンガポールでも更なる発展に向けた動きが進んでいるところではあるが、日本でも弊害が生じないよう十分に配慮した上で、外国人観光客の誘致による日本経済の発展に向けたIR施策が推進されることを期待したい。

以上

 

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