インドネシア:投資調整庁の新投資規則(2019年第5号)による
ダイベストメント義務の明確化
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 松 本 岳 人
2019年7月、インドネシア投資調整庁(Badan Koordinasi Penanaman Modal:BKPM)は、2018年に制定された投資調整庁規則(2018年第6号。以下「2018年規則」という。)を改正する新たな投資規則(2019年第5号。以下「2019年規則」という。)を制定した。2019年規則は、インドネシアの外資による直接投資に関するライセンス等に関する手続等を定めるものであるが、本稿では、2019年規則の改正のうち、2018年規則からの主な変更点であるダイベストメント義務に関する規定について概説する。
1.ダイベストメント義務の再確認
ダイベストメント義務とは、インドネシアの旧投資法の下で、100%外国資本により設立された外国資本企業に対して、操業開始から15年以内にインドネシア内国資本企業又はインドネシア人に資本の一部を譲渡することを義務づけるもので、1994年の政令第20号にその法的根拠が置かれている。2007年に投資法が改正された以降も同政令は引き続き有効と解されており、旧投資法下で各外国資本企業に課されたダイベストメント義務については、引き続き有効である旨が過去の投資調整庁の規則においても繰り返し明確に確認されてきた。2018年に施行された投資調整庁規則では、ダイベストメント義務に関する規定が削除され明文上の解釈が不明確になっていたものの、投資調整庁は、2018年規則下においてもそれ以前の投資調整庁規則(2017年第13号。以下「2017年規則」という。)において定められていた内容に従い、引き続きダイベストメント義務が存続することを前提とする運用を行っていた。そして、2019年規則において改めてダイベストメント義務が引き続き有効であることが明文規定で復活した。
2.ダイベストメント義務の履行及び免除
2019年規則においては、ダイベストメント義務の履行及び免除については、2017年規則の内容が基本的に踏襲されている。[1]具体的には、直接譲渡する場合の義務の履行方法として、額面価格で最低1000万ルピア必要であること、一度譲渡した後に買い戻すことは可能であること等が規定されている(なお、2017年規則施行当時とは異なり、Online Single Submissionシステムが導入されたことに伴い、[2]株主構成の変更が生じた場合にはシステム上の株主のアップデートが必要となる。)。また、100%外国資本企業の場合、株主が内国資本企業又はインドネシア人との間で株式を売却する旨の合意をしていないことを株主総会決議で確認することでダイベストメント義務の履行が免除される旨などが規定されている。
以上