(第14号)
企業法務よしなしごと
・・・ある企業法務人の蹣跚・・・
平 田 政 和
Ⅱ.Sophomoreのために・・・勉強しよう、「知らない」ということを知ろう(その1)
【「知らない」ということを知ろう】
アメリカの大学2年生は“sophomore”といわれる。大学で1年間きっちりと勉強した結果、いろんなことが「解った」と考えるが、現実は「解っていないことが解らない」状態であることを意味する言葉だと教えられた。手元のWebster’s Dictionaryは、この言葉はギリシャ語の「sophos(wise賢明な)」と「moros(foolish愚かな)」に由来する、と説明している。
法務部で数年間の業務経験を経ると、担当している業務について一応全てが分かったような気になる。周りの人も一応の知識を有する経験者として遇してくれる。私もこのような時期を経験してきた。しかし、後に振り返ってみるとこの時期が一番危険だったようだ。幸いにも周りに助けられて問題を起こすことはなかったが、「知らない」ことが「解っていない」、「知らない」ことを「知っていない」状態で、勉強・調査・研究することなく法律相談に答えたり、契約書を立案したりしている人を数多くみてきた。私はこの時期の部下には特に気をつけて、より深く問題を検討する癖をつけるようにとアドバイスするのが常だった。
私は写真を趣味としているが、仲間の古い戯れ歌に「カメラ自慢の幼稚園児、ピントに拘る小学生、バックが見えて中学生、メカが分かって高校生、作風出来て大学生」というのがある。内容についてはデジタルカメラ全盛の現代では少し違和感があるが、「(対象だけにのめり込んで」バックが見えてこない」ようでは、納得性のある法律相談や漏れのない立派な契約書を立案することはできない。
(以上)