◇SH0071◇ベトナム:新企業法の草案(3・完) 澤山啓伍(2014/08/29)

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ベトナム:新企業法の草案(3)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 前2回(7月31日、8月22日)に亘り、ベトナムの国会で現在審議されている新企業法の草案の内容について紹介した。今回はその続きとして、決議要件の改正についてご紹介したい。

1 決議要件(65%/75%ルール)の改正

 ベトナムでの投資を検討する際に重要な注意点として、有限責任会社の社員総会及び株式会社の株主総会における普通決議の決議要件が65%、特別決議の決議要件が75%とされている、という点がある。すなわち、合弁企業を設立する場合などに、日本の感覚からすると、過半数の出資持分又は株式を取得すれば、基本的に会社の決定権を握ることができるはずだと考えがちだが、ベトナムにおいては、51%の出資持分又は株式を持っていても、それが65%未満である場合には、単独では社員総会や株主総会で普通決議事項を可決することができず、会社の決定権を握ることができないのである。

 この点、新企業法の草案では、株主総会における普通決議の決議要件が51%、特別決議の決議要件が65%に変更されている。これにより、それぞれ過半数、2/3を決議要件とする日本の会社法に類似することになる。

 しかし、有限責任会社の社員総会における決議要件については、本年4月に出された第4草案の段階では同様に51%、65%に変更されることになっていたが、国会に上程された第5草案では現行法と同じ65%、75%に戻ってしまっている。

 もともと、ベトナムでは、WTO加盟前の「外国投資法」が適用されていた時代には、外資との合弁企業について、重要事項に関して全会一致でのみ決定ができるという形にすることで、少数出資者になることが多かった内国投資家を保護する仕組みが取られていた。現行法の65%/75%ルールもその名残であると考えられる。国会に上程された第5草案の段階で有限責任会社に関するこの点の改正が後戻りしてしまったのは、引き続き内国投資家を保護する必要があると考えがまだ存在していることの証左であろう。

2 今後の動き

 以上、3回に亘って最新の新企業法草案に規定されている改正点のうち、重要な点をピックアップして紹介した。同草案では、これら以外にも様々な改正が規定されている。また、今後国会で審議されていく中で、今回紹介した点を含め内容が変更していくことも予想されるところである。特に、第5草案における第4草案からの変更点でもあるように、ベトナムでは上位の意思決定機関に上がるにつれて、保守的・国内保護的志向が強くなる傾向がある印象がある。新投資法の草案と合わせ、今後も注目が必要である。

以上

 

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