(第46号)
企業法務よしなしごと
・・・ある企業法務人の蹣跚・・・
平 田 政 和
Ⅳ.Seniorのために・・・将来を見据えよう(その9)
【組織としての力】
組織の長となったときに、先輩から長としての仕事の80%(と聞いたと覚えているが)はマネジメントに割く必要があると教えられた。
しかしながら要員タイトが常態であったことや対応業務の関係でプレイイング・マネージャーとして行動することが期待されていたこと、それに加えて私自身が実務を担当するのが好きだったこともあり、マネジメントに割く時間は少なく、先輩の教えとは逆に20%程度だったと反省している。
このような状態であったが、常に意識していたことが一つある。
毎年の秋に我が家の庭樹の剪定に来てくれていた年配の植木職人の言葉である。私がまだ大学生だった頃のこと、どういう理由だったか、ある年の秋に、彼に代わって見よう見まねで何本かの樹を剪定した。
翌年に来てくれた彼は私の剪定について「大事な枝は切り、切るべき枝を残している。」と批評し「大学に行っているのにこのようなことが解らないのか。」と冗談を言いつつ「勢いのある枝はその勢いを少し削ぐようにし、勢いのない枝は勢いが出るように余り切らない。そうすれば全体としての樹に勢いが出るようになる。」と教えてくれた。
この言葉が強い組織、有能な組織にすることとどのような関係にあるかは組織論を勉強したことのない私にとってはよく解らないが、法務部が組織全体として最強、最良、最善、最高の力が発揮できるようにするにはどうすべきかは常に意識していた。
必ずしもその長の責任だとも思わず、個人的な事情や法務部の要員が各社で求められていた時世が影響したのだろうと好意的に解釈しているが、彼が長であった2~3年の間に、将来の法務部を担うだろうと思われていた部下を含めて部員の全員が退社したという事例を知るにつけても先輩の言葉の意味するところは大きいと思ったことである。
(以上)