(第54号)
企業法務よしなしごと
・・・ある企業法務人の蹣跚・・・
平 田 政 和
Ⅳ.Seniorのために・・・将来を見据えよう(その17)
【立法への関与】
法の制定・改定に際しできるだけ企業の意見を組み込んだ形とするためにも「立法への関与」について積極的な姿勢を持つことが必要である。
法の制定・改定に際し、業界団体や経団連等の組織を通じて、積極的に意見を述べたり、官公庁の審議会や研究会のメンバーとして、立法動向や立法内容に関与したりすることは可能であり、現在でも企業の立場で多くの人が関与されている。
私自身もかつて、通産省(当時)の「貿易と競争に関する研究会」や特許庁の「損害額の推定についての特許法改定に関する研究会」にメンバーあるいは代理として参加し、他の企業メンバーと共に企業の立場からの意見を申し述べた経験がある。
また、民事再生法の制定に際しては、中小企業庁の関係者から個人的に意見を求められ、債権者の立場から当時の和議法による企業再生についての問題点を指摘し、改善案を提案した経験もある。
安全保障貿易管理に関して通産省(当時)からの戦略物資等の輸出管理に関する各種の意見照会に対し、業界団体加盟各社の意見の取り纏めを行い、その反映に努めたり、素材全般についてのココムリスト(当時)の日本政府案の作成や一部の物資について戦略物資該当非該当判定ルールの策定に関与したこともあった。
最近では立法に際し行政手続法に基づき、パブリック・コメント手続がとられている。これらを有効に活用して、法の制定・改定に際し、企業の意見をできるだけ具体的に表明することが、今後の企業経営において必要であり、企業の法務部としては積極的に行動すべきだと考えている。
企業の法務部の責任者がメンバーとなっている経営法友会でも、企業経営に関係のある法律案については、必ずワーキング・グループを作り、内容を詳細に検討し、企業の立場からの意見を表明している。個々の企業としては、これらの場を活用し積極的に意見表明をすることが望ましい。
企業、特に大企業のエゴによる意見表明や提案であっては理解が得られないことを充分に意識しつつ、企業経営のグローバル化に伴う制度の統一やハーモナイゼーションについては、今後も積極的に発言すべきであると考える。
(以上)