◇SH0237◇銀行員30年、弁護士20年 第7回「支店融資課の仕事」 浜中善彦(2015/03/03)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第7回 支店融資課の仕事

 
弁護士 浜 中 善 彦
 

 支店の融資課の仕事は、銀行の貸出業務を担当する。丸ノ内支店の場合、取引先は大企業から中小企業、個人まであったが、金額的には圧倒的に大企業であった。当時の丸ノ内支店最大の融資先は日本石油(現新日本石油、ENEOS)グループであった。
 当時の丸ノ内支店の融資課員は、課長、課長代理のほか6人と事務職の女子行員の9人であった。メンバーは、旧帝大卒が5人、早稲田、慶応が各1人のほか、高校卒のNさんで、Nさんは私より3歳年上であった。わたしは末席であり、私の上は、1年先輩の慶応卒のSさんであった。皆さん優秀で、いい人たちばかりであった。
 

 私の仕事は、貸出稟議だけではなく、毎月の業績表作成や自動車ローンなども担当であった。業績表は、毎月の貸出、回収、収支と損益、要するに、融資課の損益計算書の作成であった。その意味もよくわからず、おまけにそろばんも下手な私にとっては、毎月荷の重い仕事であった。しかし、これについては、Nさんがいつもいろいろと教えもしてくれたし、手伝ってくれた。Nさんからは、仕事だけではなく、遊びもいろいろと教えられた。丸ノ内支店時代、日沼課長とともにもっともお世話になった人である。
 

 当時は金融タイトな時代であったから、取引先との関係では、銀行優位の時代であった。融資課行員が取引先を訪問することはなく、必ず、取引先企業の担当者が銀行に来た。融資課員はそれの応接と、依頼のあった融資についての貸出判断をする。毎日業務日誌で支店長まで回覧し、検討のうえ、採り上げるか否かを決めるのである。採り上げが難しい場合には、借り入れ希望日より早めにその旨連絡する。直前になって申込みを拒否されたら、最悪の場合倒産しかねないからである。
 融資判断は、支店長決済と本部決済とがあり、融資課員の仕事のメインは稟議作成であった。稟議は、金額、資金使途、返済条件等のほかは、特に決まった書式はなかったが、申込みの背景、収益弁済の見込み、担保等保全について、財務状況、融資の狙い等について書くのである。私の担当は30社程度ではなかったかと思うが、毎日、今でいうサービス残業をして稟議を書いたが、仕事の持ち帰りはしなかった。
 

 弁護士になって訴状や準備書面を書くことになったが、稟議を書くのに比べれば裁判書面を書く方がはるかに楽だという感じがする。一つには、銀行員時代の経験があるからだと思うが、貸出稟議の場合、事例ごとに自ら判断基準を決めて、合理的な説明をする必要があるが、法律文書の場合、判断の基準として法律という規範があるからではないかと思う。
 

 取引先の担当者は、一流企業のエリートであり、立派な人たちであった。それらの人たちとの仕事上の付き合いを通じて学ぶことも多かった。三菱本流の会社は富士銀行にとってはいずれも付き合い先であったが、社員は皆、三菱の社員であることに誇りを持っていたし、約束を違えることはなかった。
 取引先との接待、交際も重要な仕事の一部であったから、ゴルフと麻雀も必要に迫られて覚えた。接待、交際では酒席も多かったが、今思うと、そういった機会を通じて、銀行業務だけではなく、仕事以外のビジネスルールも学べたように思う。
 
以上
 

 

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