◇SH0291◇タイ:種類株式を用いた外資規制対応とその最新動向 佐々木将平(2015/04/17)

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タイ:種類株式を用いた外資規制対応とその最新動向

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木 将 平

 
 日本企業を含む外資企業にとってのタイ進出時の課題の一つが、サービス業一般に課せられる外資規制だ。製造業に関しては基本的に外資100%での事業運営が認められている一方で、サービス業に関しては、外国人事業法の外資規制が広く及び、外資比率50%以上の企業が参画することが規制されている。
 

1.種類株式を利用した外資規制対応

 そのような厳格な外資規制を回避するためのいくつかの実務上の工夫が存在するが、議決権比率の異なる種類株式を利用する方法もその一つである。外国企業がタイ人又はタイ企業のパートナーとの間で49:51の出資比率で設立した合弁会社は、外資比率が50%未満であるため、外資規制は適用されない。この外資比率の定義が議決権ベースではなく株式数ベースで規定されていることに着目して、外国株主の保有する株式の議決権数をタイ側株主の保有株式よりも多くすることにより(たとえば1株2議決権など)、外国株主が合弁会社に対するコントロールを確保するという手法が実務的に利用されている。
 

2.名義貸しに関する罰則

 外国人がタイ人の名義を借りて規制対象業種を無許可で行うこと及びタイ人がそのような名義貸しを行うことは禁止されており、刑事罰の対象となる。典型的には、タイ側株主が、全く資金拠出等をしておらず名目的に株主として名を連ねているような場合だが、種類株式を利用して外国企業がコントロールを確保している場合も、場合によっては名義貸しと判断されることはあり得る(ただ、種類株式を用いただけで直ちに名義貸しであると判断されているわけではない)。
 

3.改正の試み

 昨年末、商務省事業開発局により外国人事業法の改正案が公表され、その中に外資比率の定義を議決権ベースに改めるという内容が盛り込まれていた。上記のように種類株式を利用して外国株主がコントロールを確保するスキームを利用不可能とする改正であったことから、その動向が注目された。最終的には、日本大使館やバンコク日本人商工会議所をはじめとする各方面からの働きかけもあって改正案は廃案となったが、同様の改正案は2007年にも検討されたことがあり(最終的には廃案)、今後も同様の議論が再燃する可能性は否定できない。今後も引き続き動向を注視する必要があろう。

 

 

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