◇SH0307◇銀行員30年、弁護士20年 第24回「地方裁判所の調停委員としての仕事」 浜中善彦(2015/05/01)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第24回 地方裁判所の調停委員としての仕事
 
弁護士 浜 中 善 彦
 
 

 平成15年(2003年)3月から平成22年(2010年)3月末まで7年間、東京地方裁判所の民事調停委員を務めた。平成9年弁護士登録であるから、弁護士としての経験年数は10年未満である。普通は弁護士経験10年以上で、各単位会からの推薦であると後で知った。私の場合は、大学のクラスメートで、当時東京高裁判事であった浅生重機君の推薦であった。私の銀行員経験を評価して、とりわけ金融問題の専門家としての推薦であった。
 

 調停は、裁判官を委員長として弁護士と専門委員との3人からなる調停委員会が評議をして決定するが、調停の実際の進行は、弁護士と専門委員の2人が担当する。担当するのは、月3~4件であったが多い時は7件担当したこともある。報酬は月数千円のこともあり、多くても3万円前後だったと記憶する。文字通りのボランティアである。ただ、70歳で定年退職したときに、思いもかけず、裁判所から金杯と感謝状を頂戴した。
 調停は、事件ごとに毎月1回、1回あたり1時間が原則であるが、3か月に2回、1回1時間半になることもある。いずれの場合も、申立人と相手方の主張をそれぞれ20分から30分程度、交互に聴く。ある程度歩み寄りができたところで、両者立会いで和解協議をするのが普通のやり方である。和解が整ったところで、調停委員長の裁判官立ち合いで和解調書を作成して和解成立となる。和解が不調の場合は裁判になる。
 

 信託銀行間で、市からの受託業務が廃止になって、その損害の分担についての調停が金融関連といえばいえたが、案件で一番多かったのは、建築関連の調停である。これは、施主と建築業者との瑕疵担保責任についての争いと元請と下請との下請代金についての争いとがある。これらの案件のいくつかは、裁判所からの職権調停であり、この場合は、準備書面等裁判資料がかなり多くなっており、それらの書面を読み込むのに結構時間がかかる。しかも、いずれも難しい案件であった。
 建築関連の瑕疵担保責任についての事件では、何回か、委員の1級建築士と一緒に現場の実査に出かけた。下請けと元請けの争いは、多くの場合、請負金額や支払時期に関する争いが多かったが、景気の良かったころと違って、スーパーゼネコンが、かつては手がけなかったような小型案件にも入札に参加するようになっていた。その場合の多くは、元請けのスーパーゼネコンは上前をはねて下請けに丸投げしたと思われるような例もあった。
 

 案件のうちの何件かは、こんなものを裁判所に持ってくるなといいたくなるような事件もあった。また、準備書面のなかには、根拠となる事実があいまいなケースや、表現に問題があると思わされるものも少なくなかった。たとえば、聡明な○○子ならわかるとおりなどと、相手を揶揄するような表現などがその例である。こういった表現はきわめて下品であり、読んでいてあまり愉快ではない。また、到底とれるはずのない高額の損害賠償請求をするケースもある。これらは、いずれも弁護士の人格の問題であろうと思う。
 

 調停の場合、双方の言い分はかなり食い違っているから、最初のうちはどちらの言い分が正しいのか必ずしもはっきりしない場合が多い。しかし、何度も期日を重ねるうちに、どうやらこちらの言い分の方が正しいという心証が形成されるのが普通である。特に気を付けたことは、予断を持つことなく、できるだけ双方の言い分をよく聴くということであった。
 
以上
 
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