◇SH0331◇銀行員30年、弁護士20年 第32回「働きながら資格を取ることの意味」 浜中善彦(2015/06/02)

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銀行員30年、弁護士20年

第32回 働きながら資格を取ることの意味

 

弁護士 浜 中 善 彦

 サラリーマンで、資格を取ろうと思っている人は少なくない。みずほ総研の元社員が、定年の数年前、税理士試験に挑戦しようと思いますといったので、それはいいね、頑張ってくださいと答えた。半年後だったと思うが、勉強の方はどうですかと聞いたら、あれはやめましたという答えだった。結局彼は、無資格のまま定年退職した。
 この例に限らないが、資格を取ろうと思っても、それを継続できる人は少ない。弁護士や税理士資格に限らないが、働きながら資格を取ることはそう簡単ではない。少なくとも、それまでと同じ生活をしながら取れるほど簡単な資格はない。どの資格を取るにしても、1年勉強すれば取れる資格などはない。本当に資格を取ろうと思ったら、文字通り、うまずたゆまず努力する覚悟が必要である。

 

 働きながら資格を取ろうとする場合、その目的または動機を明確にすることがきわめて重要である。なんとなく、第2の人生に備えてという漠然とした動機の場合が多いように見受けられるが、この場合は、あまり長続きがしない例が多いように思う。というのは、第2の人生といってもだいぶ先の話のような感じで、上記の例のように、やってはみたがそう簡単ではないことがわかると、そこでやめてしまうということなのではないかと思う。

 

 資格があると定年退職後もなんとなく安泰という感じがあるかもしれないが、資格があれば定年後もそれで生活できるほど甘くはない。新規登録弁護士の就職問題がきわめて深刻な問題となっていることは新聞報道等でご存じのとおりである。公認会計士の場合も、合格後の実務修習ができないためにいつまでも会計士補になれないなど、難関試験を突破したからといって収入の保証などはない。
 それでは、資格を取ることに意味はないのではないかというと、それも違う。働きながら資格を取るということは、定年後の経済的な安定を得ることよりも、仕事以外に挑戦する目標を持ち、そのために、継続して努力するということに意味があるのではないかと思う。働きながら資格取得をするためには、いかにして勉強時間を確保するか。作った時間をどう活用するかがきわめて重要になる。そのためには、それまでの生活習慣を見直し、目的達成のためにたゆまぬ努力が求められる。それこそが、資格取得に挑戦することのもっとも重要な意義ではないかと思う。

 

 サラリーマンは、ややもすると定年で人生は終わりのように考えている人がいるが、そうではない。80歳以上生きるのがごく普通になった現在、定年後の生活は余生ではなく、文字通り第2の人生である。そのためには、定年後をいかに過ごすかは、中高年サラリーマンにとってはぜひとも考えておくべき課題である。たまたま私は、43歳だったか44歳のとき、司法試験が日本一難しい試験であるということで、それならやってみようと思っただけである。弁護士になって、定年後それで報酬を得ようとは考えてもみなかった。結果として、幸運にも定年の年に合格したので、弁護士として現在も仕事をしているが、仮に定年までに司法試験に合格していなくても、きっと受験勉強は続けていたと思う。資格取得に挑戦するということは、仕事とは別の生きがいを持つということである。資格は士業に限らない。海外勤務のある人は、通訳案内士の試験に挑戦するという選択もある。サラリーマンの人たちも、仕事以外の生きがいの選択肢の1つとして、資格取得に挑戦してほしい。資格取得によって、新たな人生が始まるかもしれない。

以上

 

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