銀行員30年、弁護士20年
第42回 司法試験は短期決戦と心得る
弁護士 浜 中 善 彦
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司法試験は、法科大学院卒業後5年以内に5回しか受験資格がないということを肝に銘ずる必要がある。旧試験のときのように、何回でも受験可能ではないということは相当きついハードルである。私の教師としての経験では、法科大学院生の多くは、その点の認識が実に甘い。
5年というといかにも長いというか、時間があるように感じるかもしれないが、実際に経験してみると、5年などはあっという間に過ぎてしまう。受験するからには、1回で合格する気迫がなければならない。5回のうち、1回目と2回目で択一合格、3回目で最終合格などとのんきに考えている受験生もあるようであるが、受験するからには、最初から合格する覚悟と気迫がなくてはいけない。1回目は腕試しだということで、択一試験用の勉強しかしないなどは論外である。絶対に1回目から最終合格するつもりで、全科目についてそのための準備が必要である。
法務省作成の資料によると、平成26年の合格者の受験回数別合格者は、1回目1,059人、2回目427人、3回目324人となっている。圧倒的に1回目の受験者が多く、回数を重ねるごとに合格者数が減ってきている。司法試験は努力すればだれでも受かる試験でないだけではなく、長く勉強していれば受かる試験でもないことを銘記すべきである。その意味では、既習者だからといって、未修者に比べて特に有利ともいえない。
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受験の年数も回数も制限されている現行司法試験制度のもとでは、旧試験のときのように、受験生活が長引いて、今更どこかへ就職する気にもなれず、かといって、ほかに行く所もないため何となく予備校に通うということは許されない。私の受験時代の経験では、旧試験制度における司法試験受験予備校の生徒の大半はこのような学生であると見受けられた。このような受験生は、何年経とうともまず合格の見込みはない。なぜなら、これらの受験生のほとんどは、最も大事な合格に対するモチベーションを喪失して、かといって今更就職する気にもなれず、ただ、惰性で予備校に通っているだけだからである。いうところのフリーターである。そして、予備校の経営を支えていたのは、このような受験生であるといってよいように思えた。残念ながら、法科大学院生の中にも、これらに似た学生がいることは否定できない。とりわけ、旧試験崩れの学生や三振後の再入学生の場合、知識の量は思ったほど多くはない。逆に答案を採点してみると妙な癖がついている場合が少なくない。これらの受験生は、今までの学習方法だけでなく、生活態度全体を見直して、文字通り再出発する覚悟が必要である。社会人受験生の場合も、生活習慣を見直して、司法試験一本にかける覚悟が必要である。
繰り返しになるが、司法試験の受験資格は法科大学院卒業後5年以内に5回しかない。この5年間で自分の将来が決まるのであるから、そのことは十分に認識してかかる必要がある。司法試験に合格するためには、合格に必要な基礎的学力を身につけることが絶対の要件になる。これなくして合格はあり得ない。早期に合格するためには、定評ある基本書を中心に、学ぶべき範囲を明確にして、できるだけ効率的な学習方法を確立して、繰り返して勉強する必要がある。その意味では、司法試験の勉強は、単純作業の繰り返しともいえる。
以上