アルゼンチン対外債務問題を巡る現況及び展望(下)
西 村 あ さ ひ 法 律 事 務 所
弁護士 宮 塚 久
弁護士 田 口 祐 樹
5 管理会社の当事者適格を認めた最高裁判決
前回既述のとおり、最高裁は、2016年6月2日、管理会社に当事者適格を認める判決を出し、事件を東京地裁に差し戻したことから、管理会社が提起した訴訟はようやく本来の軌道に戻った。
この判決は、「債券の要項」に基づき訴訟追行権を授与するというサムライ債の仕組みが構築されていることを正面から是認した。市場の取引慣行や関係当事者の認識に照らせば、当然のことを認めた判決ではあるが、訴訟法的には、法令上の根拠がない任意的訴訟担当を認めた、それも、担当者(管理会社)が被担当者(債権者)の一人ではないにもかかわらず認めた初めての最高裁判決であり、非常に画期的な判決である。加えて、債権者は、「債券の購入に伴い」訴訟追行を管理会社に委託することについて「受益の意思表示をしたもの」であると判示している。これは「債券の購入」行為を黙示的な意思表示と認めた点で、また、(通常は権利を取得し利益を享受するための)受益の意思表示に基づき訴訟追行権の授与を認めた点で、民法(537条1項)の解釈上もたいへん意義深い判決である。
この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください