◇SH0846◇ペルーの知的財産権制度の基礎 谷口 登(2016/10/24)

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ペルーの知的財産権制度の基礎

西村あさひ法律事務所

弁理士 谷 口   登

 

1 はじめに

 2016年第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比4.4%と好調であるが、模倣品・海賊版の輸入、販売量も多い。模倣品・海賊版対策のためには知的財産権の取得・管理が必須である。

 ペルーは、コロンビア、ボリビア及びエクアドルと同様、アンデス共同体(Comunidad Andina)の加盟国であり、アンデス共同体の機関である委員会の決議は加盟国において直接適用され、特許、実用新案、意匠等の産業財産権に関する決議第486号、632号及び689号、著作権に関する決議第351号が存在する。

 上記決議に基づき、加盟国における知的財産権に関する基本的な制度枠組みは統一されているものの、出願手続き等の詳細については、加盟国は独自に国内法を定めている。

 

2 産業財産権

(1) 特許及び実用新案

 特許権の存続期間は、出願日から20年間である。

 特許要件としては、新規性、進歩性、産業上の利用可能性が求められている。発見、化学的理論、、コンピュータソフトウェア自体、人間や動物の治療方法等は、特許の対象とはなっていない。

 特許出願は方式審査が終了した後に出願公開され、利害関係を有する者は公開日から60日以内であれば異議申立を行うことができる。出願人は、公開日から6ヶ月以内に審査請求を行わなければならず、審査請求された出願のみが実体審査が行われる。なお、当該期間内に審査請求が行われなかった場合は、出願は放棄されたものとみなされる。優先審査・早期審査制度は採用されていない。

 特許無効審判制度が設けられており、特許無効を主張する者は、いつでも無効審判を請求することが可能である。

 実用新案権の存続期間は、出願日から10年である。存続期間の延長・更新をすることはできない。実用新案の保護対象は、機器、道具、装置等とされており、工程、方法等は保護対象から除かれている。

 実用新案の審査、異議申立及び無効審判制度については、概ね特許と同じであるが、審査請求期間が公開日から3か月以内と特許よりも短い点に留意する必要がある。

(2) 意匠

 意匠権の存続期間は、出願日から10年であり、存続期間の延長・更新はできない。

 登録要件としては、新規性が求められている。また、他のアンデス協定加盟国と同様、技術的・機能的考慮から必然的に決定される意匠、部品を組み立て又は連結するために必要な形状のみからなる意匠等については登録を受けることができない。

 意匠出願は方式審査が終了した後に出願公開され、公開日から30日以内であれば異議申立を行うことが可能である。特許や実用新案の場合とは異なり、実体審査は異議申立があった場合にのみ行われ、異議申立がなかった場合には、明らかに新規性を欠いているものと認められる場合を除き、職権で、出願が拒絶されることはない。

 ただし、無効審判制度が設けられており、意匠登録の無効を主張する者は、無効審判を請求することが可能である。

(3) 商標

 商標権の存続期間は登録日から10年であり、更新も可能である。

 保護対象には、文字、図形、立体的形状の他、色彩の組み合わせ、音、匂い、味、触感の標章も含まれる。ただし、匂い、味、触感の標章はいずれも一貫した方法で記録するシステムがないため、登録を受けることは事実上不可能である。

 商標出願の方式審査後に出願公開され、正当な利害関係を有する者は、公開日から30日以内に異議申立を行うことができる。異議申立期間経過後、異議申立の有無にかかわらず、実体審査が開始される。

 また、登録商標無効審判制度が設けられており、先に登録された商標との類似等の相対的拒絶理由による場合、又は悪意によって取得された場合は、無効を求める者は、登録から5年以内に無効審判を申立てることができる。なお、商標の識別性の欠如等の絶対的拒絶理由による場合は、上記の期間制限は適用されない。

 なお、3年間正当な理由なく使用されなかった場合は、利害関係人は、不使用を理由とした不使用取消審判を請求することも可能である。

(4) その他

 上記の他に、半導体集積回路の回路配置、原産地名称及び営業秘密等に関する保護規定もある。

 

3 著作権

 ペルーの著作権法には財産権、著作者人格権、著作隣接権についての保護規定があり、財産権としての保護期間は、著作者の生存中と死後70年とされている。ただし、匿名または変名の著作物は公表後70年、集団著作物、コンピュータープログラム及び視聴覚の著作物に関しては最初の発表後70年とされている。

 

4 条約の加入状況

 知的財産に関する条約のうち、パリ条約、TRIPS協定、ベルヌ条約、WCT(著作権に関する世界知的所有権機関条約)、WPPT(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)、PCT(特許協力条約)、TLT(商標法条約)に加盟している。

 

5 知的財産権所管官庁

 ペルーでは、特許、実⽤新案、意匠、商標、著作権⾏政、競争防衛知的財産権保護庁(INDECOPI)が知的財産に関する所轄官庁である。

 

6 権利侵害及び水際措置

 知的財産権の侵害について、INDECOPIによる行政摘発の他、民事上の救済(差止及び損害賠償)を求めることのできる司法手続きが設けられており、刑事罰も定められている。

 水際措置に関しては、税関当局が担当機関となる。

以上

 

(注)本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法又は現地弁護士の適切な助言を求めていただく必要があります。また、本稿記載の見解は執筆者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所又はそのクライアントの見解ではありません。

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