◇SH0926◇フィリピン:ノンバンク、証券引受会社等に対する外資出資比率規制の撤廃(2) 澤山啓伍(2016/12/14)

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フィリピン:ノンバンク、証券引受会社等に対する外資出資比率規制の撤廃(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 前回ご紹介したとおり、フィリピンでは、2016年7月に成立したRepublic Act No. 10881により、ファイナンス会社(Financing companies)、貸金業者(Lending companies)、証券引受会社(Investment houses)及び保険査定業者(Insurance adjustment companies)についての外資出資比率規制が撤廃された。これらの業種について外資100%による進出が可能になったことは、日系金融機関にとってもチャンスであるといえよう。とはいえ、フィリピンに現地法人を設立してこれらの金融業務を行うためには、内国企業にも適用される、該当の金融機関としての許認可を得る必要がある。また、これらの各金融機関の概念(その金融機関が行うことができる事業の内容)は、日本におけるそれとは若干異なっている部分もある。そこで、本稿では前回に続いて、証券引受会社及び保険査定業者について、必要な許認可と適用される規制について概説する。

証券引受会社

 証券引受会社は、政府及び民間企業が発行する有価証券の引受業務を行う会社をいう。日本同様、このタイプの会社は、同時にファイナンスアドバイザー、資産管理業務、投資銀行業務を行うことも多い。なお、証券引受会社は別個の許認可を取得することなく株式仲買業を行うこともできるが、株式仲買業だけを行う証券会社のための許認可も別途用意されている(これについても外資出資比率上限規制は定められていない。)。

 証券引受会社としての許認可を取得するためには、3億ペソ以上の資本金が要求され、その他フィリピン中央銀行当局が定める条件を満たす必要がある。

 証券引受会社による引受業務はフィリピン証券取引委員会により厳しく規制されており、例えば、証券の公募を行うための引受契約の内容は、手数料額を含め、フィリピン証券取引委員会の認可を得る必要がある。

 証券引受会社は、信託業務、準銀行業務、投資管理業務及び外国為替業務を行うこともできるが、そのためには別途フィリピン中央銀行当局からの許認可を取得する必要があり、同局からの監督を受けることになる。

保険査定業者

 保険査定業者は、保険会社が販売した保険商品について、発生した保険事故の査定を行い、支払うべき保険金の額を決定する業務を行う会社である。これについても外資規制が撤廃され、フィリピン保険委員会(Philippine Insurance Commission)の許認可を得れば業務を行うことが可能になった。

 保険査定業者の許認可を取得するための要件は比較的厳しくないが、フィリピン保険委員会に対して、対応する保険の種類毎に5万ペソの保証金の預託を求められ、組合及び企業の場合には50万ペソ、個人の場合には25万ペソの資本金を有していることの証明が求められる。

 

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