◇SH1183◇インドネシア:「生産に関連する」ディストリビューターに関する議論(下) 坂下 大(2017/05/24)

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インドネシア:「生産に関連する」ディストリビューターに関する議論(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

 

 前稿では、ネガティブリストにおける「生産に関連する」ディストリビューターの意義に関する近時の議論を紹介した。本稿では、ディストリビューターに関するもう一つの実務上の関心事である、「生産に関連する」ディストリビューターによる輸入の可否及びその範囲に関する近時の議論を紹介することとしたい。

 

3. 「生産に関連する」ディストリビューターによる輸入の可否及び範囲

 ネガティブリスト施行直後より、(ⅰ) 外資100%で設立できる「生産に関連する」ディストリビューターがインドネシアで流通できる物品は、「関連する」製造会社(つまりインドネシアの会社)が製造したものに限られるのか、(ⅱ) 仮にそうだとすると、当該ディストリビューターによる輸入業務は生じ得ず、輸入ライセンス(API)の取得は認められないということになるのか、という議論が実務界より提起されていた。この点に関してはこれまでのBKPMの説明、見解に紆余曲折があり、「生産に関連する」ディストリビューターは、インドネシアの製造会社(原則として製造に用いるための原材料等のみの輸入が認められる。)が例外的に輸入できる完成品、すなわち商業大臣令2015年118号が定める一定の補完品、テストマーケティング用品、及びアフターサービス用品(以下「補完品等」という。)に該当するものに限り、APIを取得して輸入することが可能であり、この場合に当該ディストリビューターが取得するAPIは(製造会社が取得するAPI-Pではなく)インドネシア国内における売買目的での物品の輸入の際に取得すべきAPI-Uである、というのが、直近(2016年9月時点)におけるBKPMの見解であった(当該時点までの議論の経緯については、拙稿「インドネシア:「生産系列にある」ディストリビューター続報―輸入の可否」を参照。)。補完品等の輸入は、もともと製造会社自身において可能であるため、「生産系列にある」ディストリビューターにこれを認めたとしても、外資企業側の実質的なメリットはさほど生じないのではないか、という実務の反応もみられたところである。

 

 このような中、先の説明会(2017年3月29日に開催されたBKPMによる説明会)においてこの点に関するBKPMの新たな見解が示され、「生産に関連する」ディストリビューターは、「関連する」製造会社の株主の製造に係る物品であれば、API-Uを取得することにより輸入及び国内流通が可能である旨の説明がなされた。ポイントは2つある。1つ目は、やはり「生産に関連する」ディストリビューターによる輸入は可能であり、その際に取得するAPIはAPI-Uであるという点、2つ目は、輸入が可能な物品の範囲は、必ずしも商業大臣令2015年118号が定める補完品等の概念にとらわれることなく、「関連する」製造会社の株主の製造に係る物品であるか否かが基準となるという点である。後者の点に関する補足説明では、例として、日本で飲料製品を製造している親会社がインドネシアに製造子会社を有する場合に、親会社が新たに外資100%で設立できるディストリビューターは、必ずしもインドネシアの製造子会社が製造している飲料製品と同一の製品でなくとも、親会社の製造に係る飲料製品であればこれらを輸入でき、かつ、「親会社の製造に係る製品」には、当該親会社自身が製造したもののみならず、その子会社(例えば、インドネシアの製造会社からみて兄弟会社にあたる、タイの製造子会社)が製造したものも含めて考えてよい旨の言及があった。これがさらに異なる種類の製品(上記の例では食品等)である場合はどうか等、その外延に関する更なる議論を含めて、BKPMの見解は引き続き注視する必要があるものの、上記見解を前提とすると、少なくとも輸入可能な物品の対象が補完品等に限られていた従前の整理に比して、外資100%可のディストリビューターが取り扱える物品の範囲が相当程度広がることになり、外資企業にとってはより使い勝手のよい制度となることが見込まれる。

 

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