◇SH1359◇中国:外商投資指導目録(2017年改正)の施行 川合正倫(2017/08/25)

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外商投資指導目録(2017年改正)の施行

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 

 2017年6月28日に中国の国家発展改革委員会と商務部が、「外商投資産業指導目録(2017年改正)」(以下「指導目録2017年改正版」という。)を公布し、同改正版は、2017年7月28日より施行された。

 指導目録2017年改正版は、ネガティブリスト方式の規定に方式が変更されるとともに、製造業及びサービス業を中心に制限措置が削除され、外資比率に関しても条件が緩和しており国内外から注目を浴びている。

 

1. ネガティブリストの明記

 指導目録2017年改正版により、外商投資参入許可特別管理措置(外商投資参入許可ネガティブリスト)を明確に採用している。具体的には、従来の奨励類の持分比率要求項目、制限類、禁止類という分類から、制限類と禁止類からなる外商投資参入許可ネガティブリスト方式に一本化し、外国投資に対して内国民待遇と外商投資参入許可ネガティブリストを組み合わせた管理方式に切り替えることになった。

 

2. 制限措置の削減

 指導目録2015年版には、外商投資の分野に関する制限規定が93ヵ条設けられていた(奨励類の持分比率要求条目19ヵ条、制限類条目38ヵ条、禁止類条目36ヵ条を含む)が、指導目録2017年改正版では、外商投資の分野に関する制限規定は63ヵ条に留まり(うち制限類35ヵ条、禁止類28ヵ条)、制限規定の数が30ヵ条減少することになった。

 例えば、以下に記載する業種は、指導目録2015年版では制限類に該当していたが指導目録2017年改正版では制限類から除外され(すなわち、外商投資ネガティブリストに載らないことになる。)、当該分野への投資については、中国政府の審査認可を経る必要がなく、届出のみで参入できるようになった。

 

<指導目録2015年版の制限内容>

  1.  •  貴金属(金、銀、プラチナ族)の探査、採掘
  2.  •  リチウム鉱石の採掘、選鉱
  3.  •  大豆油、菜種油、落花生油、綿実油、アブラツバキ種子油、ヒマワリ種子油、パーム油等食用油脂の加工(中国側の持分支配)、米、小麦粉、粗糖の加工、とうもろこしの高度加工
  4.  •  バイオ液体燃料(燃料アルコール、バイオディーゼル)の生産(中国側の持分支配)
  5.  •  モリブデン、錫(錫化合物を除く)、アンチモン(酸化アンチモン及び硫化アンチモンを含む)等の稀少金属の製錬
  6.  •  オートバイの製造:中国側の持株比率は50%を下回らず、一社の外商は、同じ種類のオートバイ類の完成車製品を生産する合弁企業を中国国内に二社まで(二社を含む)設立することができる。
  7.  •  道路旅客輸送会社
  8.  •  大型の農産物卸売市場の建設、運営
  9.  •  船舶代理(合弁、合作限定)
  10.  •  信用調査と格付けサービス会社

 なお、指導目録2015年版の制限類・禁止類のうち、ゴルフ場・別荘の建設や大型テーマパークの建設・運営といった内資・外資を問わずに制限を受けていたものについても、指導目録2017年版から削除されている。これは、規制が緩和されたわけではなく内資と同様に制限を受けるため、専ら外商投資企業を対象とする指導目録2017年改正版には載せないことにするという趣旨である。

 

3. 奨励類の条件付きの廃止(一部)

 指導目録2017年改正版は、引き続き、先端製造、ハイエンド技術、省エネ・環境保護、現代サービス業等の分野への投資を奨励類とする方針を採っている。指導目録2017年改正版の奨励類は348項目で、指導目録2015年版との比較では、仮想現実(VR)設備の研究開発・製造や3Dプリンター設備の重要部品の研究開発・製造、都市駐車施設の建設・運営等の6項目が新たに追加された。

 また、以下の奨励類項目については、従来付されていた合弁・合作等の条件又は外国投資家の出資比率制限が廃止された。

指導目録2015年版
奨励類
指導目録2017年改正版

オイルシェール、オイルサンド、シェールガス、炭層ガス等の非在来型オイルガスの探査、開発(合弁、合作限定)

奨励類、(合弁、合作限定)を削除

坑内ガスの利用(合弁、合作限定)

奨励類、(合弁、合作限定)を削除

自動車のバス型ネットワーク電子技術(合弁に限定)

奨励類、(合弁に限定)を削除

電動パワーステアリングシステム電子制御機器(合弁に限定)

奨励類、(合弁に限定)を削除

民間用衛星の設計と製造、民間用衛星ペイロードの製造(中国側の持分支配)

奨励類、(中国側の持分支配)を削除

新エネルギー自動車の重要部品の製造:充電式動力電池(エネルギー密度≧110Wh/kg。循環寿命≧2000回。外資の比率は50%を超えない)

削除。ネガティブリストにも載らない。

軌道交通輸送設備(合弁、合作に限定)

削除。ネガティブリストにも載らない。

海洋工事設備(モジュールを含む)の製造と修理(中国側の持分支配)

削除。ネガティブリストにも載らない。

船舶用低速、中速ディーゼルエンジン及びクランクシャフトの製造(中国側の持分支配)

削除。ネガティブリストにも載らない。

会計、監査(代表パートナーは中国籍を有していなければならない)

削除。ネガティブリストにも載らない。

総合水利拠点の建設、運営(中国側の持分支配)

削除。ネガティブリストにも載らない。

 

4. おわりに

 指導目録2017年改正版は、1995年の外商投資産業目録制定以来、七度目の改正であるが、外資規制の開放が一層進められており、中国の経済成長が鈍化するなかで外資の参入を促進したいという中国政府の意図が覗える。指導目録2017年改正版の施行及びその後の関連規定の整備により、外国投資家の一層活発な投資活動が期待される。

以上

 

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