SH4485 タイ:タイ証券取引委員会(SEC)による上場会社の私募による株式発行手続の改正(下) 今野庸介(2023/06/13)

組織法務資本市場・IPO

タイ:タイ証券取引委員会(SEC)による上場会社の私募による株式発行手続の改正(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 今 野 庸 介

 

(承前)

5 重要なケースについてIFA(独立した財務アドバイザー)の意見の提供

 既述のとおり今回の改正によりSECによる承認が不要になったが、他方で、私募による株式発行に関する株主総会による決議に先立って、上場会社の株主の権利及び利益を保護する観点から、株主の権利及び利益に影響を及ぼす一定の可能性がある場合には、IFAが作成した意見書を株主に対して提供することが必要になった。より具体的には、私募による株式発行が大要以下のいずれかに該当する場合(「重要なケース」という。)、上場会社は、IFA[1]を選任した上で、当該IFAが作成した報告書を株主総会に提供する必要がある。

  1. 私募による株式の募集価格が「市場価格」よりも低い場合。
  2. 当該私募がEPS(Earnings Per Share)(1株当たりの利益)又は支配権について25%を超える影響を有するものである場合[2]
  3. 私募により株式を取得する者が、当該上場会社の議決権を有するもののうち「上位の者」になる場合(なお、当該計算上、関係者の保有株式を含める。)[3]

 また、IFAの意見の範囲・対象としては、①私募の対象となる株式の価格及び条件の適切性、②投資家に対して当該私募により株式を発行することの妥当性及びメリット(私募による株式の希薄化等の影響との比較や資金の使途を含む。)、③上場会社の株主が私募に係る提案を承認すべきか否かについての意見に加え、その理由を含むものでなければならない。

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(こんの・ようすけ)

 2014年に長島・大野・常松法律事務所に入所。入所以降、ファイナンス案件を中心に国内外の企業法務全般に従事。2020年にミシガン大学ロースクール(LL.M.)修了。2022年8月よりバンコクオフィスに勤務。現在は、在タイ日系企業の一般企業法務等も含め、幅広く企業法務に関与している。

 

 

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