公正取引委員会による独占禁止法に関する
相談事例集(令和4年度)の公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 石 田 健
弁護士 松 本 千 佳
1 はじめに
公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、事業者等の独占禁止法に関する理解を一層深めることを目的とし、参考になると考えられる主要な相談の概要を相談事例集として毎年公表している。
令和4年度の相談事例集においては、主要な相談事例として「事業者の活動に関する相談」3件と「事業者団体の活動に関する相談」6件の合計9件が取りまとめられている[1]。
本稿では、相談事例の内容面に着目して以下のとおり4つに大きく分類した上で、各相談事例の要点を簡潔に解説する。各相談事例の詳細な内容は公取委のウェブサイトを参照されたい。
2 各相談事例について
インボイス制度の導入に伴って生じる問題 |
協同組合が、組合員と免税取引先との取引において、組合員が消費税相当額を負担しないことを決定する行為 |
協同組合の行うチケット事業において、免税組合員に対して従来のチケット換金手数料に加え消費税相当額として仕入税額控除に係る経過措置を考慮しない金額を徴収する取組 |
|
昨今の市場環境の変化に伴って生じる問題 |
小売業者4社が卸売業者との取引において「2分の1ルール」を採用すること等を共同で宣言する取組 |
事業者団体による会員の取引先に対する要請文書の発出 |
|
事業者団体による会員の従業員等の労働環境改善に向けた行動指針の作成 |
|
事業者団体による実態調査 |
事業者団体による会員事業者の供給製品の原材料等に係る市況の推移、価格転嫁の状況等の調査の実施及び公表 |
事業者団体による医薬品の出荷状況等に関する実態調査の実施及び公表 |
|
その他 |
貨物運送を行う事業者が自ら運営するシステムにおいて、貨物の依頼者が自ら依頼した貨物の運送状況等を確認できるようにする取組 |
医療機器等の販売事業者による卸売業者への販売価格の指示 |
この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください
(いしだ・たけし)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2015年から3年間にわたり任期付職員として公正取引委員会審査局第四審査において審査専門官(主査)を務める。公取委において違反事件の審査・審判・訴訟を担当した経験を活かし、現在は独禁法(下請法・景表法含む)に関する幅広い案件を扱っている。
(まつもと・ちか)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2020年一橋大学法学部法律学科卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング