SH4579 事業者もチェックしておくべき「Web 4.0とバーチャル・ワールド(仮想世界)に関するEUの戦略」 中崎尚(2023/08/03)

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事業者もチェックしておくべき
「Web 4.0とバーチャル・ワールド(仮想世界)に関するEUの戦略」

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 中 崎  尚

 

1 Web4.0に向けた欧州への取組みとは

 2023年7月11日、欧州委員会は、Strategy on Web 4.0 and virtual worlds to steer the next technological transition(次の技術的転換期を先取りするための、Web4.0とバーチャル・ワールドに関する戦略)を公表した[1]。同日付で、欧州委員会から欧州議会、欧州理事会、欧州経済社会委員会および欧州地域委員会への通達文書である、An EU initiative on Web 4.0 and virtual worlds: a head start in the next technological transition(Web4.0とバーチャル・ワールドに関するEUのイニシアチブ:次の技術的転換期を先取りするために)[2](以下「通達文書」という。)およびその附属文書であるCommission Staff Working Document(委員会スタッフ向けの作業文書)[3](以下「作業文書」という。)が公表されており、これらの文書を併せてみることで詳細を把握することができる。

 これらはいずれもWeb3.0時代の次に来ると言われているWeb4.0時代の到来を見越した欧州の戦略を示すものである。ではなぜバーチャル・ワールドとWeb4.0が並べられているかというと、ここでは、バーチャル・ワールドをWeb4.0への移行の重要なステップと位置づけているためである。

 

出典:「『Web3.0』とは何か?」[4](経済産業省、2023年3月7日)

 

 この新戦略の背景には、インターネットの進化スピードの異常な早さが存在する。現在発展中の第3世代のインターネット「Web3.0」は、オープン性、分散化、ユーザーの全面的なエンパワーメントを主な特徴としているところ、次世代のインターネット「Web4.0」は、これを超えて、デジタルと現実のオブジェクトや環境の統合、人間と機械の相互作用の強化を可能にするという特徴を有する。Web4.0は「ブロックチェーン技術を活用したユーザー主導のインターネット」というWeb3.0のコンセプトを引き継ぐ一方で、AI(人工知能)やビッグデータなどの多様な技術を駆使した「人間と機械の共生ウェブ」を目指している点が特徴的である。

 2023年3月に発表された2030年以降のEU経済の見通しでは、デジタル化が主要な推進力のひとつと予想されている。ここでWeb4.0はシームレスに相互接続されたインテリジェントで没入感のある世界をもたらす主要な技術的転換点であると強調されている。

 

2 Web4.0とは

 Web4.0は、ワールド・ワイド・ウェブの第4世代として期待を寄せられている。ここでは、高度な人工知能やアンビエント・インテリジェンス、モノのインターネット、信頼できるブロックチェーン・トランザクション、バーチャル・ワールド、XR機能などを駆使して、デジタルと現実のオブジェクトや環境が完全に統合され、相互にコミュニケーションすることで、物理的な世界とデジタルの世界がシームレスに融合し、真に直感的で没入感のある体験が可能になると言われている。

 具体的には、「ユーザーはあらゆる場所から多様なデバイスやサービスに簡単にアクセスできるだけではなく、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのデバイスを利用して、リアルタイムで仮想世界を楽しめるようになる。」 また「Web4.0では、AI技術によって状況に応じたデータ処理を自動的に行えることで、ユーザーがよりパーソナライズ化されたサービスやコンテンツを利用できるようになることが予想され」ており[5]、メタバースとAIが目玉であるといえる。

 

出典:「Web 4.0 Explained – A Brief!」[6](Agile District、2022年9月30日)

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(なかざき・たかし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。

 

<事務所概要>
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