EDPB、eプライバシー指令5条3項の技術的範囲(追跡技術)に関するガイドラインを公表
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アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 中 崎 尚
1 はじめに
2023年11月16日、欧州データ保護委員会(以下「EDPB」)は、eプライバシー指令5条3項の技術的範囲に関するガイドライン2/2023(以下「本ガイドライン」)を発表した。[1]現在、既存のトラッキングツールに取って代わり、新たなビジネスモデルを生み出すトラッキング手法が多数出現しつつあり、プライバシーへの新たな脅威として認識されつつある。クッキーを始めとする既存のトラッキング技術については、eプライバシー指令5条3項の適用可能性は明らかであるところ、新たなトラッキングツールへの同条項の適用可能性の有無に関しては不明な点も多い。本ガイドラインの登場によって、このような不明確さが解消されることが期待されている。本記事では、eプライバシー指令の枠組みを踏まえた上で、本ガイドラインの概要とその位置づけ、事業者が求められる対応を紹介する。
2 eプライバシー指令とは
eプライバシー指令(ePrivacy Directive)[2][3]の正式名称は、Directive 2002/58/EC of the European Parliament and of the Council of 12 July 2002 concerning the processing of personal data and the protection of privacy in the electronic communications sector(電子通信分野における個人データの処理およびプライバシー保護に関する指令)といい、2002年に制定、2009年に改正され、EUの全加盟国で国内法化されており、現在も引き続き有効である。Brexitにより2020年1月31日にEUから離脱した英国でもeプライバシー指令を国内法化したThe Privacy and Electronic Communications (EC Directive) Regulations 2003(PECR)[4]が、引き続き有効である。
3 eプライバシー指令と国内法
eプライバシー指令は、電子通信(電話、インターネット等)における通信の秘密の保護等に関してあるべき規律内容を定め、EU加盟国各国にこれに沿った国内法の制定・改正を義務付けることで、どのEU加盟国でも十分なプライバシー保護を達成することを目指すものである。指令を踏まえて、EU加盟国各国は国内法を整備したが、政府の規制への取り組みの温度差やオンライン広告業界のロビイング活動の差もあり、その内容にはいくらかの差が生じている。このため、実務において、オンライン広告のコンプライアンスを検討するに際しては、eプライバシー指令を検討するだけでは足りず、各国のCookie規制法を検討する必要がある点は注意が必要である。
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(なかざき・たかし)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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