メタバースをめぐる法的課題への対応に関する
官民連携会議の動向(続報⑥)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介
弁護士 李 豪 俊
弁護士 長谷川 達
1 はじめに
知的財産戦略本部は、2022年11月「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題への対応に関する官民連携会議」(以下「官民連携会議」という。)を設置して議論を重ね[1]、2023年5月に「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題等に関する論点の整理」(以下「本論点整理」という。)を公表した[2]。
これを受けて、内閣府知的財産戦略推進事務局は「本論点整理」の主なポイントを「メタバースプラットフォーマー・プラットフォーム利用事業者向け」[3]と「メタバースユーザー・コンテンツ権利者向け」[4]に分けて2024年2月13日に公表した(以下「ポイント集」という。)。
本記事では本論点整理の概要、次の記事では、ポイント集の概要を紹介し、実務への示唆を検討する。
2 本論点整理の検討の視点と基本的な考え方[5]
本論点整理では、官民連携会議における検討の視点として、メタバースの活用により実現する価値と目指すべきメタバースの理念を以下のように提示している。
出典:本論点整理 4頁
本論点整理は、目指すべき価値を実現するためのルール形成等の在り方として、「自由で多様性に満ちたメタバース空間」「安全・安心に過ごせるメタバース空間」を実現するために、①利用規約等による対応、②技術による対応、③民事上刑事上の手続きによる対応、④法的措置(行為規制等)による対応を掲げている。
そして、本論点整理は、法的なルールとして、ガイドライン等をはじめとしたソフトローと法令等のハードローを適切に組み合わせて対応することが必要であるとし、メタバースが変化・発展の途上にあること、メタバース空間には国境がないこと、複数プラットフォームを横断すること等、メタバースの特性をふまえたルール形成が重要になるとしている。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(い・ほじゅん)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年東京大学法学部卒業。2017年東京大学法科大学院卒業。2018年弁護士登録(第二東京弁護士会)
(はせがわ・いたる)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年中央大学法学部卒業。2022年東京大学法科大学院中退。2023年弁護士登録(東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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