SH4845 個人情報委、「管理者又は処理者の主監督機関の特定に関するガイドライン8/2022」の仮訳を作成 井上乾介/中山希(2024/03/07)

取引法務個人情報保護法

個人情報委、「管理者又は処理者の主監督機関の特定に関する
ガイドライン8/2022」の仮訳を作成

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介

弁護士 中 山   希

 

1 はじめに

 2024年2月20日、個人情報保護委員会は、「管理者又は処理者の主監督機関の特定に関するガイドライン8/2022」(以下「本ガイドライン」という。)の仮日本語訳を公表した[1]。本ガイドラインは、EDPB(欧州データ保護会議)が2023年3月28日に採択したものであり、GDPR上の「主監督機関」を特定するための基準等を示したものである。

 本稿では、GDPR[2]の監督体制、越境取扱いの概要についても触れた上で、本ガイドラインの要点について紹介する。

 

2 GDPRの監督体制

 GDPR上、各加盟国には最低1つの監督機関が設置され(GDPR51条1項)、当該監督機関が、その領土内において、GDPRの適用の監視・執行等を行うものとされている(同57条1項)。当該監督機関には、このような業務を遂行するため、制裁金の賦課を含む、調査権限、是正権限および承認・助言権限が付与されている(同58条1項ないし3項)。

 もっとも、管理者または処理者(以下「管理者等」という。)がEEA(ヨーロッパ経済領域)内の複数の国においてデータを取り扱うに当たっては、一定の要件を満たす場合、すべての監督機関に対応する必要はなく、主監督機関を唯一の担当窓口として対応すれば足りるものとされている(このような仕組みを「ワンストップショップ・メカニズム」という。)。

 一方で、管理者等が自由に主監督機関を選択できるとした場合には、自らに有利な主監督機関を選択するいわゆるフォーラム・ショッピングの問題が生じうること等から、主監督機関の特定について本ガイドラインが定められている。

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(なかやま・のぞみ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2015年東京大学法学部卒業。2017年早稲田大学法科大学院卒業。2018年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2021年10月から2023年11月まで経済産業省ヘルスケア産業課に出向し、医療分野における個人情報の取扱いにかかるルールの策定等に携わる。

 

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